2021 Fiscal Year Annual Research Report
大量気象データを用いた広域雪崩災害リスク評価とその温暖化影響に関する研究
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20K22437
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
勝山 祐太 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (10877921)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 雪崩 / 温暖化影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
<最終年度に実施した研究の成果> 大量の気象シミュレーションの結果であるd4PDFを積雪変質モデルの入力値とする数値実験を実施し、積雪のせん断強度とせん断応力の比で定義される積雪安定度の確率を推定した。ただし、初年度に収集したd4PDFは空間解像度が5kmであり、積雪変質モデルの実行に想定以上の計算機コストを要したことから、空間解像度を20kmに変更した。数値実験の結果を基にして、積雪安定度が1.5を下回る積雪層を、構造的に壊れやすい積雪層(弱層)とし、弱層の形成頻度を計算した。数値実験は、1950年から2010年の間に対応する過去実験と全球平均気温が4℃上昇した年代に対応する温暖化実験の二つを行った。また、計算結果の妥当性を検証する基礎データとして、過去の雪崩履歴について情報収集を行った。 <研究期間全体を通じて実施した研究の成果> 日本の積雪地域の広範囲を対象としてd4PDFを収集し、これを積雪変質モデルの入力値とする数値実験を行った。その結果、気温上昇により、弱層の強度増加の速度がこれまでよりも早くなるため、多くの地域で弱層の頻度は低下することが分かった。一方で、当初は計算する予定がなかった弱層よりも上層の積雪層の重さ(上載積雪荷重)の将来変化を調べたところ、一部の地域で増加する結果が得られた。この結果をより詳細に調べるために、弱層を代表的な2種類(新雪としもざらめ雪)に分けたところ、新雪の弱層に対応する上載積雪荷重は、太平洋側の地域で増加し、しもざらめ雪に対応する上載積雪荷重は、日本海側の高標高帯で増加することが分かった。上載積雪荷重は、弱層が破壊されたときに流下する雪の量を表しており、以上の結果は起こりうる雪崩の規模が大きくなることを示唆している。これら成果をまとめた英語論文は、現在、国際誌にて査読中となっている。
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