2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on small and medium-sized shrines and local communities in modern Japanese cities
Project/Area Number |
20K22441
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小南 弘季 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (90881582)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 地域神社 / 地域社会 / 国家神道 / 氏子 / 境内借地 / 祭礼空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京府下の神社を対象に、明治初頭に進められた神社境内の近代化とその実態を法制度の段階的な構築と実際の適用状況から分析した。 明治維新以降における神社境内のもっとも大きな変化は、地券発行に伴う地種区別と上地であったが、東京の都市内に鎮座する神社のうち社領を有していたものは数社に限られており、また中規模の神社境内には門前町屋が存在したものの、範囲が明確なそれらの区別は容易であったため、数例の複雑な土地所有、借用関係にあったものを除いて東京の神社境内における上地は順調に進んだということを明らかにした。 また、「祭典法用に必需の場所」という観点から新たな境内空間における様々な変化をみることによって、社務所に関する変化が重要であると指摘した。東京における半数の神社では従来の神主神職と異なる人物が神官として補任されていたが、自宅から通勤していた一部の神官を除いて、多くは勤務先の神社の社務所に居住していた。神社と神官が分離されたものの社務所という枠組みが残されたために執務空間と居住空間の分離には至らず、それゆえに神社境内において神官の居住空間が確保され続けたということを明らかにした。 初年度より、東京都公文書館が所蔵している神社境内の借地に関する記録の調査分析を通じて、明治初頭の境内借地について、そこで活動する半定住的な出稼商人と祭礼時にのみ営業する露店商人の二種の借地人を対象に、彼らが構成する神社組織とは位相の異なる地縁的かつ複合的な組織構造を検討してきた。 以上の作業を通じて、明治初頭の東京を対象に、古来都市に数多く存在してきた中小規模かつ地域的な神社=地域神社に関する空間の歴史的ありようを考察してきた。地域神社を核に形成されてきた都市内の地域共同体の持続と変容の実態の一部を明らかにすることができ、日本における都市空間の近代化について理解を深めることができた。
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