2022 Fiscal Year Annual Research Report
国立ハンセン病療養所の住宅計画の変遷にみる居住環境の形成過程
Project/Area Number |
20K22446
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
パク ミンジョン 岡山大学, 環境生命科学学域, 特任助教 (80881094)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
Keywords | ハンセン病 / 国立療養所 / 居住環境 / 住宅計画 / 入所者 / 患者住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療施設としてではなく居住施設としてのハンセン病療養所の機能に着目し、110年以上にわたる歴史の中で各時代の社会背景や居住者ニーズの変化に対応してきた入所者住宅の変遷について調査を行った。当初、計画立案者や施設管理者の視点だけでなく居住者の立場から居住環境の開拓模様とその中での彼らの働きに焦点をあてた調査を予定していたが、長引く新型コロナウイルス感染症の影響により高齢である入所者へのインタビュー実施が困難となったため、文献資料を中心とした調査に切り替える一方、証言集や証言映像、第3者による語り部活動など調査対象を広げて対応を試みた。 まず、療養所の特徴的な建物として入所者が生涯を過ごした住宅建築に焦点を当て、類似施設との比較を行った。結核療養所の他に官舎、寄宿舎、社宅など近代に入り新たに登場した住宅類型を対象とした。建設規模や利用者属性の違いなどにより平面構成面での共通点は発見されなかったが、工場寄宿舎において大家族主義が取り入れた施策が取り入れられるなど、初の国立療養所長であった光田健輔が掲げていた理想の療養所像と共通する思想が散見された。 続いて、全国の国立療養所に供給された患者住宅数や立地状況、入所者数や年齢構成の推移、施設整備状況などから各療養所の住宅計画を明らかにし、全体の傾向やそれぞれの施設の特性について分析を行った。同じ制度下で設置、運営された施設であっても建設時期や立地状況によって異なる特徴が見られ、理想の療養所像や入所者像などの思想が施設計画に現れる事例が確認された。これらの特徴は施設の拡大、縮小など変革期において顕著に表れる傾向にあり、今日では終の住処の選択や外部への施設開放などの面で違いが表れることが明らかになった。
|
Research Products
(4 results)