2021 Fiscal Year Research-status Report
健康被害を引き起こす居住空間に生じる低周波騒音の共鳴現象の評価・防止手法の開発
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20K22454
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Research Institution | Nihon University Junior College |
Principal Investigator |
鈴木 諒一 日本大学短期大学部, その他部局等, 助手 (40875043)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 室内音場 / 低周波騒音 / 固有振動 / 音圧 / 粒子速度 / 音響エネルギー密度 / 周波数スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,低周波騒音による健康被害を防止する居住空間の音響設計・評価手法を確立することであり,本研究期間内に,1)固有振動の発生原因の特定に必要な「固有振動の方向検出手法」の開発,2)被害程度の評価に必要な「固有振動による低周波騒音の評価方法」の開発を目指し,下記のⅠ~Ⅲのような手順で研究を計画した.Ⅰ.「固有振動」の方向検出手法の確立について数値シミュレーションによって検討する.Ⅱ.「固有振動」の方向検出手法について,縮尺模型実験や実音場において実証実験を行う.Ⅲ.「固有振動」の評価手法の確立のため聴感実験を実施し,方向を考慮した固有振動の聴感上や心理面の影響を調査する. 2021年度は,主に以下の成果が得られた.①矩形残響室で測定された音響エネルギー密度のパワースペクトルによって,測定点にあまり依存せずに固有振動の分析が可能であることを示した.②矩形残響室で測定された粒子速度のインパルス応答を周波数分析することで,室内音場の固有振動の発生方向を検出できる可能性を示した.また,軸波だけでなく接線波や斜め波の発生方向について推定するためには,複数点での測定が有効であることを示した.③吸音を偏在させた実音場で測定した室内インパルス応答から減衰を除去した減衰除去インパルス応答を周波数分析することで,減衰によって不明確となっていた固有振動をより明確に抽出できることを示した.④研究成果を日本建築学会および日本音響学会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究計画は以下の通りであった. 1)実音場において測定を実施し,「固有振動の分析手法」の実音場における適用可能性について検討する.2)「固有振動」の評価手法を確立するため,無響室において聴感実験を実施し,固有振動の聴感上や心理面の影響を調査する. 1)については,吸音を偏在させた実音場において測定を実施し,測定した室内インパルス応答から減衰を除去した減衰除去インパルス応答を周波数分析することで,減衰によって不明確となっていた固有振動をより明確に抽出できることを示した.また非拡散音場においては,低い周波数だけでなくシュレーダー周波数より高い周波数においても固有振動の影響が顕著に現れることがわかった.2)については,実音場における分析手法の検討に時間を要したことと,コロナ渦における聴感実験の困難さから未実施となった.以上により,研究はやや遅れていると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、直方体室における検討が主であった.そのため、2022年度は以下について取り組む. 1)吸音の偏在した室と不整形な室における数値シミュレーションを実施し,吸音や室形状による影響について検討する. 2)実音場での実験では検討可能なパターンについて限りがあるため,縮尺模型による実験を実施する。具体的には吸音の量や設置位置によって吸音パターンを変化させることで、吸音と固有振動の関係について検討する. 3)無響室でスピーカーにより定在波を発生させることで聴感実験を実施し,固有振動の聴感上や心理面の影響を調査する. 4)成果を日本建築学会,日本音響学会,国際会議で発表する.
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Causes of Carryover |
2021年度に縮尺模型実験による検討を実施予定であったが,小型のマイクロホンでの測定が難航したため,実音場での実験を先行して実施した.より詳細な検討のためには縮尺模型による実験が必要であると考えられるため,実験実施のための経費として次年度使用が生じた. さらに,2022年度に開催される国際会議(International Congress on Acoustics)において当該テーマで発表するため,その参加費用として使用予定である.
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Research Products
(2 results)