2020 Fiscal Year Research-status Report
レジリエンスを備えた地域エネルギー供給システムの長期最適化手法の開発
Project/Area Number |
20K22455
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
上野 貴広 国立研究開発法人建築研究所, 環境研究グループ, 研究員 (80881804)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 地域エネルギー供給 / レジリエンス / 地域熱電併給 / エネルギー需要 / 長期最適化 / 脱炭素 / 分散型電源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究開発課題は、地域情勢の変遷にも対応した地域エネルギー供給システムの長期最適化手法の構築を目的としている。本システムの事例調査を基にシミュレーションを用いて、外的要因の変化に高いレジリエンスを持ちながら、ライフスパンにおけるエネルギー消費量やCO2排出量、トータルコストなどを高効率で削減できる設備構成や運転設定を明らかにするものである。 研究初年度の実績としては、計算対象都市における各建物の地理情報システムデータ(GISデータ)から、それぞれの電力需要と、暖房、冷房、給湯の各熱需要の計4つのエネルギー用途の需要をそれぞれ5分間隔で1年間推定する手法を完成させた。また、地域エネルギー供給システムに関して、空気熱源式ヒートポンプやターボ冷凍機といった空調熱源設備、コージェネレーションシステム、太陽光発電パネル、蓄電池、蓄熱槽の各運転を5分間隔で再現するシミュレーションモデルを完成させた。また、これらを基に複数の異なるエネルギー指標を用いて地域エネルギー供給システムの省エネルギー性能を評価した。 また、地域エネルギー供給システムの供給地域環境の将来変遷については、需要家建物側では建て替わる建物の外皮性能や設備機器性能の向上や温暖化の影響による外気温の上昇を想定し、系統電力については電源構成における再生可能エネルギーの割合増加を想定して将来のCO2排出係数を設定した。 さらにライフスパンにおけるレジリエンス性能として、自然災害によって系統電力が途絶した場合の地域エネルギー供給システムによる地域活動継続効果の評価手法作成に着手した。システムのライフスパンにおける地震災害による電力の被害関数・復旧関数を考慮して、地域活動保障の経済効果を評価した。 現在、上記の作業結果を取りまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス流行を考慮して、研究初年度に予定していた地域エネルギー供給システムの導入事例を対象としたアンケートやヒアリングについては見送り、代わりに地域エネルギー供給システムのシミュレーションモデル作成やシステムの評価手法拡充に努めたため、おおむね順調に研究が進展していると判断した。 研究初年度の実績としては、計算対象都市における各建物の地理情報システムデータ(GISデータ)から、それぞれの電力需要と、暖房、冷房、給湯の各熱需要の計4つのエネルギー用途の需要をそれぞれ5分間隔で1年間推定する手法を完成させた。また、地域エネルギー供給システムに関して、空気熱源式ヒートポンプやターボ冷凍機といった空調熱源設備、コージェネレーションシステム、太陽光発電パネル、蓄電池、蓄熱槽の各運転を5分間隔で再現するシミュレーションモデルを完成させた。また、これらを基に複数の異なるエネルギー指標を用いて地域エネルギー供給システムの省エネルギー性能を評価した。 また、地域エネルギー供給システムの供給地域環境の将来変遷については、需要家建物側では建て替わる建物の外皮性能や設備機器性能の向上や温暖化の影響による外気温の上昇を想定し、系統電力については電源構成における再生可能エネルギーの割合増加を想定して将来のCO2排出係数を設定した。 さらにライフスパンにおけるレジリエンス性能として、自然災害によって系統電力が途絶した場合の地域エネルギー供給システムによる地域活動継続効果の評価手法作成に着手した。システムのライフスパンにおける地震災害による電力の被害関数・復旧関数を考慮して、地域活動保障の経済効果を評価した。 現在、上記の作業結果を取りまとめ、学術雑誌への論文投稿を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、まず地域エネルギー供給システムの導入事例を対象にアンケートやヒアリングを行うことで、ライフスパンである20~30年間の、接続される需要家建物数やエネルギー需要、システムの運転設定の変遷を把握し、地理条件などでその変遷傾向を分類していく。なお、新型コロナウイルス流行を考慮して、Webを通じたヒアリングや熱供給事業団体が毎年発行している便覧資料によるデータ収集も検討する。 次に、得られたデータを基に、システム導入地域の情勢に関する複数の将来シナリオを作成する。現在の計算対象地域に加え、建物の立地特性などが特徴的な地域を複数選び、シミュレーションモデル上にて地域エネルギー供給システムを構築し、各シナリオ下でのライフスパンにおけるエネルギー消費量やCO2排出量、トータルコストなどの削減効果を5分間隔で計算し評価することで、各シナリオで最適な設備構成や運転設定について検討する。 最後に上記の成果とこれまでの研究実績を統合し、各計算対象地域に対してどのシナリオにおいても高いエネルギー利用効率をライフスパンで保ち続ける高レジリエンスな設備構成や運転設定の導出に取り組む。この際、運転設定についてはライフスパンにおいて複数回の変更ができるとして計算を行う。またシステムにおける各設備の容量や運転順位といった設定項目が10項目以上あり、各項目が独立して設定できるため、最適化なシステム設定を導出するためのケース検討を総当りで行うには7桁以上のケースを計算し、その中から最適なケースを見つけなければならない。そこで効率的に最適化なシステム設定を導出するために、遺伝的アルゴリズムといったメタヒューリスティクスの利用を検討する。
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