2020 Fiscal Year Research-status Report
機械学習を用いたクラスター変分法とフェーズフィールド法のカップリング手法の開発
Project/Area Number |
20K22456
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 亮 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60883535)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | フェーズフィールド法 / 機械学習 / クラスター変分法 / Deep Learning |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、原子配列を予測する「クラスター変文法」と材料の内部組織を予測する「フェーズフィールド法」を機械学習の一つである「Deep Learning」を用いてカップリングさせる点にある。令和2度度は、それぞれの計算手法を用いてこれまでの研究を進めるとともに、クラスター変分法とフェーズフィールド法のカップリング手法において重要なquasi-equilibrium conditionをDeep Learningを用いて予測するモデルを構築した。具体的にクラスター変分法の研究においては、第一原理計算を用いて得られた原子間エネルギーから自由エネルギーを定式化し、X-Al-Ti (X: Fe, Co, and Ni)合金の状態図を作成し、それぞれの相の安定性に関して議論を行ない、それらの研究成果を国内学会と国際シンポジウムで発表した。一方、フェーズフィールド法に関してはAl-Cu合金を対象に温度勾配下での液相に分布した第二相粒の成長挙動(オストワルド成長)のメカニズムを明らかにし、その研究成果を現在論文としてまとめている段階である。このフェーズフィールド法の計算においては実験で得られたデータを基に計算を行なったが、上述したクラスター変分法で得られる自由エネルギーを計算に取り入れることで実験データを一切用いない計算が可能であることが期待される。これらの計算に、上述した現在取り組んでいるDeep Learningを用いたquasi-equilibrium conditionの予測を取り入れることで、本研究の最終目的である「クラスター変分法」と「フェーズフィールド法」のカップリング手法の開発が可能になることが大きく期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度はクラスター変分法とフェーズフィールド法を用いた合金の状態図や凝固過程の計算と並行して、フェーズフィールド法で用いられているquasi-equilibrium conditionをDeep Learningで予測するモデルの構築を重点的に行なった。本研究の当初の目的はクラスター変文法とフェーズフィールド法のカップリング手法の開発にあったが、その研究を進めるうちにフェーズフィールド法で用いられているquasi-equilibrium conditionの計算に非常に時間を要することが明らかになった。そこで令和2年度はクラスター変分法とフェーズフィールドのカップリングを行なう際に重要になるquasi-equilibrium conditionの予測をDeep Learningを用いて行なった。Quasi-equilibrium conditionはフェーズフィールド法において合金組織の時間発展方程式を解く際に異相界面の間で局所平衡が成り立つことを仮定するもので、この仮定を置くことにより計算をシンプルかつ容易にすることが可能であるが、それぞれの計算格子において濃度保存と局所平衡を満たす解を求める必要がある。一般的にニュートン法を用いた数値解析による手法がquasi-equilibrium conditionの計算には用いられているが、すべての格子点においてニュートン法を解くことは大きな計算コストを伴う。そこで本研究ではDeep Learningを用いてquasi-equilibrium conditionを満たす解を予測するモデルを構築し、合金の凝固過程のシミュレーションの高速化を図った。その結果、他の機械学習を用いたquasi-equilibrium conditionの予測よりもより精度の高い結果を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はこれまでと同様にクラスター変分法とフェーズフィールド法を用いた状態図や組織の時間発展の計算を進めると伴に、クラスター変分法とフェーズフィールド法のカップリング手法を構築するために非常に重要な課題であるquasi-equilibrium conditionの予測の高精度・高速化を一番の重点課題として進める予定である。令和2年度は機械学習を用いてquasi-equilibrium conditionの予測を行なったが、機械学習では予測精度に限界があることから機械学習以外の手法にも取り組むことを考えている。具体的には、quasi-equilibrium conditionはchain ruleを用いることで自由エネルギーの濃度に関する二階微分と結びつけることができるため、機械学習に頼らずともquasi-equilibrium conditionを比較的容易に計算できる可能性がある。そのような手法を用いて得られたquasi-equilibrium conditionの計算結果を機械学習で得られた計算結果と比較することで計算手法の有効性・実用性を判断する予定である。このquasi-equilibrium conditionの予測はフェーズフィールド法とクラスター変文法のカップリング手法に限らず、フェーズフィールド法とCalphad法といった他の計算手法とのカップリングにおいても一般的に用いられているため、非常に重要な研究課題である。また、このquasi-equilibrium conditionの予測が高速・高精度に行なうことが可能になれば、これまで希薄溶体を仮定した計算が主であったフェーズフィールド法の合金の計算が、任意の合金組成で比較的容易に行なえることが期待される。
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Causes of Carryover |
コロナで学会が中止になったため。
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Research Products
(2 results)