2020 Fiscal Year Research-status Report
光充電が可能な蓄電池の開発に向けたスピネル型酸化物正極設計の基盤構築
Project/Area Number |
20K22460
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下川 航平 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (30876719)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 光蓄電池 / スピネル型酸化物 / 正極材料 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究を進める上で必要になる環境整備と,モデル材料を用いた基礎検討を主に行った.自作の電気化学セル内の電極にキセノン光源の白色光を入射して光電気化学測定を行う手法を確立し,安定的で再現性の高い実験が行える基盤を整備した.合剤電極の組成や対極・参照極の選択,またそれらの電気化学セル内でのセットアップについても最適化を行った.さらに,光照射下での充放電時に,副反応として電解液の分解反応が顕著に生じるという問題点があったが,電解液の濃度を適切に制御することで安定化が可能であることを明らかにした.これは,実験上の技術と光電気化学特性の理解という両観点において,意義のある進展である.次に,典型的な光触媒と種々の正極材料を混合した電極に対して,光電気化学特性の評価を行った.本研究で主眼を置くスピネル型酸化物の他にも,代表的な正極材料を用いて同様の実験を行い,光電気化学特性を比較した.その結果,光照射前後の充放電挙動の変化は,正極材料の種類によって大きく異なることが明らかとなった.そのような違いが生じる起源を考察することにより,光蓄電池に適した正極材料の基礎的な設計指針を得た.その知見を基にして,スピネル型酸化物の詳細設計を行っており,その充放電特性の評価および反応メカニズムの解明を進めていく.結論として,新たな電池系の開拓を行う上での第一の障壁となる(i)実験手法の確立と(ii)材料設計の指針構築について一定の成果が得られたことが,本年度の実績である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光電気化学測定を行うための光源や電気化学系の環境整備に加えて,正極の安定的な評価が可能な合剤組成・対極・参照極・電解液の最適化が完了し,本研究を遂行するための基盤を構築することができた.さらに,モデル材料を用いた比較実験から,有望な材料系の基礎的な指針を得ることに成功した.それにより,今後の材料設計の方向性が定まったことは,大きな進展である.したがって,研究はおおむね順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られた指針を基にして,有望な材料候補群に対してスクリーニングを行い,見出された系に対してより詳細な光電気化学測定および充放電後の電極評価を行う予定である.それにより,充放電反応のメカニズムを解明することで,本電池系の材料設計の基盤となる学理を構築することを目指す.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,旅費として使用予定であった経費が大幅に削減されたため.この次年度使用額は,物品費(正極合剤の混練機を想定)として使用する予定である.
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