2021 Fiscal Year Annual Research Report
極低炭素鋼ラスマルテンサイトにおける短いき裂の進展機構の解明
Project/Area Number |
20K22468
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
植木 翔平 島根大学, 学術研究院理工学系, 助教 (50880382)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ラスマルテンサイト / き裂 / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
先進高強度鋼の主要組織であるラスマルテンサイトでは、その微細で複雑な階層組織のために、疲労き裂伝播機構の詳細については未だ不明な点が残されている。本研究の目的は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてき裂先端近傍の転位運動をその場観察することで、き裂開口時の転位挙動を捉え、その伝播機構について新たな知見を得ることである。本研究では、組織形態に影響を及ぼす炭素の影響を極力排除し、単純化されたラスマルテンサイト組織におけるき裂先端の現象に着目するため、極低炭素鋼を用いた。2020年度には、TEM内で引張荷重を負荷する際の観察領域に、所望の組織を配置させる試料作製法を確立させた。具体的には、電子線後方散乱回折法により、あらかじめ試料表面の結晶方位を同定し、所望の領域に対して集束イオンビームを用いて損傷を与えることで、その後の電解研磨による優先溶解領域とした。2021年度には、その手法を用いて作製した試料の引張その場TEM観察を行った。その結果、ブロック内において、き裂先端から転位が放出されることよりも、マルテンサイト組織形成時に導入された、き裂前方に既存する転位の活動の方が先に起こることが明らかとなった。これまでに、研究代表者は、極低炭素鋼ラスマルテンサイトのき裂伝播挙動について調査し、ブロック内またはブロック境界を横切ってき裂進展する際には、転位セル境界に沿ってき裂が進展することを見出している。これらのことは、繰返し荷重負荷によって、まずき裂先端前方における既存転位が活動することで転位セル組織が形成され、き裂はそれらの境界を伝播していくことを示唆している。
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