2020 Fiscal Year Research-status Report
Design of novel Ti alloy with FCC phase by using first-principles calculation
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20K22470
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
河野 翔也 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (60878429)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 第一原理計算 / チタン / 構造相転移 / 長周期積層構造 / マグネシウム / 合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタン合金では、結晶構造に六方最密構造(HCP)と体心立方構造を利用した開発がされている。申請者は、チタン合金への新たな結晶構造の選択肢として面心立方構造(FCC)の利用の可能性について、第一原理計算法を用いて研究した。本年度はチタン(Ti)にニオブ(Nb)やケイ素(Si)が加わるとFCC構造が出現するという実験報告をもとに①純Ti及び②Ti-Nb系と③Ti-Si系を対象として、FCCや長周期積層構造(FCC構造とHCP構造が周期的に積層した構造)の結晶構造パラメーターを求めた。結晶構造モデルはマグネシウムの研究で用いたモデルをTiやNb,Siに置換したものである。そして、それらがHCPからFCCや長周期積層構造を形成する際の遷移状態解析を行った。①純Tiの計算結果から、TiはMgと比べて大きな活性化エネルギーを長周期積層構造の形成のために必要とすることがわかった。しかし、鉄のFCC-HCP相転移の活性化エネルギーの計算結果よりは低いため、十分に相転移が可能な活性化エネルギーであった。②Ti-Si系の計算結果からはSiが加わることによりHCP構造よりも長周期積層構造のほうが安定化することがわかった。これは計算上、TiのHCP構造にSiの濃化部分ができると、自発的に長周期積層構造に相転移することを示す結果である。③Ti-Nb系の計算結果からは、Nbにより長周期積層構造が安定化することはなく、遷移状態を確認するとHCPから長周期積層構造への相転移は否定される結果を得た。以上からTiにおいてNbよりSiが長周期積層構造を形成させる可能性のある添加元素であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要述べたように、成果としてもこれまでに明らかではなかった添加元素の効果を明らかにすることができており、今後のチタン合金の開発にとって有益な基礎データの収集ができたと考える。2021年度中にこの研究結果について学会発表及び論文発表することを予定している。以上から2020年度に予定していた研究計画を実施することができ、計画通りに研究が進行していることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、予定通りSi以外の長周期積層構造を形成させる元素の探索を行う。そのために、Mg合金の研究の知見と前述のTiの解析結果を用いて、Tiにおける長周期積層構造形成のメカニズムを構築する。それをもとに、添加元素のスクリーニングを行う。Mgの知見のみをもとにした現状の計画では、熱力学的にはHCPからFCCが形成するためには圧縮の力が必要である。そこで第一原理計算を用いて、様々な元素のHCPとFCCについてエネルギーの圧力依存性を求める。これにより圧力でHCPからFCC構造へ相転移する元素群をスクリーニングする。この元素群がTiにおいて長周期積層構造の形成が期待される元素群となる。しかし、Ti-Siの計算結果では必ずしも圧縮の力が働かなくても良いのではと考えられる結果も得ている。そこで、ある程度網羅的に遷移状態計算を行うことも検討している。以上のアイデアのもとに、2020年度と同様の研究手法を実施し、Tiに添加すると長周期積層構造を形成する元素を明らかにする。
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Causes of Carryover |
予備的な計算を行ったところ、現状の計算環境で十分だったため、予算内で最大の効率化を図れるような計算環境の構築計画を行うために使用計画を変更している。翌年度分と合わせて利用することでより良い計算機を導入することができる。そこで、これから計算機を導入する予定である。また、申請時に想定していなかった研究協力者の異動に伴う必要なものを購入予定である
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