2021 Fiscal Year Research-status Report
Subcycle observation of spin-dependent transport under intense mid-infrared electric field transient
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20K22478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 貴之 東京大学, 物性研究所, 助教 (60880151)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 中赤外 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は中赤外光源系のアップグレードを進めると同時に,光電場下におけるスピン依存伝導の検出に向けた基礎実験を行った。光源のアップグレードに関しては,非線形応答の高感度化に向けて,前年度に構築したキャリアエンベロープ位相安定な2サイクルパラメトリック増幅器の繰り返し周波数を10 kHzから100 kHzに増強して輝度を高めるとともに,短期・長期安定性の向上を図った。また,チャープミラーのカスタマイズにより,2 um帯域で2サイクルへのパルス圧縮に成功した。繰り返し周波数とピーク電場強度が高くなったことで,固体に集光した際の非線形応答をよりクリアに観測できるようになった。さらに,長波長化の検討を行い,LiNbO3結晶やKTiOAsO4結晶を用いて波長4 um帯域までの発生が可能であることを確認した。 スピン依存伝導の検出実験に関しては,第一段階として中赤外よりもサブサイクル分光が容易なTHz帯域に着目し,光ポンプ・テラヘルツプローブ測定を行った。試料としてはスピン偏極寿命の長い半導体を用いた。スピン軌道相互作用を持つ半導体試料に対してバンドギャップ付近に共鳴した円偏光を照射し,透過テラヘルツの偏光をプローブしたところ,ポンプ光のヘリシティに応じてテラヘルツ波の偏光回転が反転した。これはスピン偏極した光励起電子がテラヘルツ波によってバンド内駆動された際に異常ホール効果を起こしているものと解釈でき,光電場下におけるスピン依存伝導の線形応答成分を確認したと考えられる。 これらの成果は,フェムト秒時間スケールの光電場を用いたスピン制御を実現するための足掛かりとなるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最も重要な目標である「スピン偏極キャリアによって生じる光電場下のスピン依存伝導」に関してはテラヘルツ測定でその端緒を得ることができ,光源開発に関しても今後の実験に向けて十分な安定性を得られたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでに得られた半導体中におけるテラヘルツ測定の結果を踏まえて,今年度は引き続きテラヘルツ帯域でより高品質な試料を用いた精密測定を行い,様々なパラメータ依存性を網羅的に調査する予定である。これにより,まず比較的弱い光電場下でのスピン流ダイナミクスを半導体系において明らかにする。また,最終目的である非線形光応答領域でのスピン流制御に到達するべく,テラヘルツ波の高強度化・中赤外光源の長波長化という二つの方向性から引き続き光源開発を進めていく。
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Causes of Carryover |
COVID-19の長期化により当初計上していた旅費に余剰が生じたため,余剰分を2022年度に回すこととなった。年度配分とあわせて,装置構築に必要な光学部品・機械部品等の購入および学会参加費等に充てる予定である。
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Research Products
(8 results)