2022 Fiscal Year Annual Research Report
Subcycle observation of spin-dependent transport under intense mid-infrared electric field transient
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20K22478
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗原 貴之 東京大学, 物性研究所, 助教 (60880151)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | テラヘルツ / 中赤外 / スピンホール効果 / 光物性 / 光源開発 / 高次高調波発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,高強度光電場下においてスピン自由度が電子ダイナミクスに及ぼす影響の調査を目標とした光源開発と測定装置の開発を行った。 光源開発に関しては,Yb:KGWレーザーをベースとした2-3 um帯の中赤外パラメトリック増幅器を構築した(T.K. et al., Opt. Express, 31(7), 11649-11658 (2023))。バルク結晶からのスーパーコンティニューム発生を圧縮してパルス内差周波発生することで,キャリアエンベロープ位相が固定されたシード光を作り,これをBiBO結晶で縮退パラメトリック増幅してチャープミラーで圧縮することで,パルスエネルギー数10 uJ,パルス幅2サイクル程度の中赤外パルス光発生に成功した。今年度はこの光源を絶縁磁性体試料に照射したところ7次までの高次高調波発生を検出でき,非摂動的電子ダイナミクスを生じさせるのに十分な強度であることが確認された。また,磁性による影響を調べるため,磁場下での高次高調波発生・検出を可能にするための装置構築に着手した。 当初の予定では,上記の中赤外光源をスピン軌道相互作用の強い金属試料に対して可視円偏光と同時に照射しそこからのTHz放射を測定することで横伝導の効果を調査する予定であったが,金属よりもスピン散乱時間が長くスピンポンプの影響がより見やすいと思われる半導体・絶縁体にターゲットを絞ることとした。そこで,MBE成長した半導体GaAsバルク結晶に対してバンドギャップ付近に共鳴した近赤外円偏光パルスを照射し,光ポンプ-THzプローブ測定を行ったところ,ヘリシティに応じた透過THz波の偏光回転が確認された。これは光励起キャリアのバンド内駆動による異常ホール効果として解釈できる。 これらの成果は,光電場下で生じるコヒーレントな非線形電子ダイナミクスにおいて,スピン状態が及ぼす影響を捉えたものである。
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