2021 Fiscal Year Research-status Report
高効率熱電変換性能を有する新規磁気熱電材料の探索と設計指針の構築
Project/Area Number |
20K22479
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
見波 将 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (10876840)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 異常ネルンスト効果 / 異常ホール効果 / トポロジカル磁性体 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、巨大な異常ネルンスト効果を発現する磁性体の探索とその発現機構を解明することを目標としている。 巨大な異常ネルンスト効果を示す磁性体はワイル点の存在だけではなく、ノーダルラインが重要な役割を果たしている事を明らかにした。バンド構造の中のノーダルラインに着目した理論研究としては、従来、スピン軌道相互作用を入れた時に二点残るワイル点に着目した研究が多くなされてきた。ノーダルラインにエネルギー分散がない簡単な模型では確かにワイル点が重要な役割を果たす。しかしながら、現実の電子状態の中では、ノーダルラインはエネルギー分散をもち、停留点が存在する。すなわち、ワイル点ではベリー極率が発散し、エネルギー分散の停留点では状態密度が発散する。このノーダルラインの停留点(状態密度の発散)が巨大な異常ネルンスト効果の起源となり、新しい物質設計の指針となりうることが期待できる。 本年度は、強磁性ハーフホイスラー合金CoMnSbにおいて、異常ネルンスト効果の温度に対する対数的な振る舞いが観測され、その起源がフェルミ準位近傍に存在するワイル点に由来する事を明らかにした。また、カゴメ格子構造を有する強磁性体Fe3Snにおいて巨大な異常ネルンスト効果を報告した。アップスピンとダウンスピンが縮退した特殊な電子状態が巨大なベリー曲率と異常ネルンスト効果の起源となっていることが第一原理計算を用いた電子状態の解析により明らかになった。 今後は磁気転移温度が高い磁性材料の系統的な探索だけではなく、モデル計算によるノーダルラインの解析や、系統的にノーダルラインの状態密度を計算するプログラムの開発にも取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気転移温度が高い強磁性材料を中心に、異常ネルンスト効果の評価とその起源の解明を第一原理計算を用いて継続的に進めている。 強磁性ハーフホイスラー合金CoMnSbにおいて、第一原理計算による詳細な電子状態の解析の結果、フェルミ準位近傍にワイル点が存在し、これが対数的な振る舞いの起源になっていることを報告した。 また、ワイル反強磁性体Mn3Snと同じ結晶構造を有する、カゴメ格子強磁性体Fe3Snにおいて、室温以上で鉄単体の10倍を超える巨大な異常ネルンスト効果を観測した。 第一原理計算による電子状態の解析から、 アップスピンとダウンスピンが縮退した特殊な電子状態が六方晶系に対応した対称性で発現し、巨大なベリー曲率と異常ネルンスト効果の起源となっていることが明らかとなった。 このような機構による異常ネルンスト効果の増大はこれまで報告例がなく、今後の物質探索に新たな指針を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は材料探索の範囲を強磁性体に限らず、反強磁性体などの磁性体へも拡張し継続的な高効率磁気熱電材料の探索をおこなう。また、ノーダルラインを効率的に計算するためのプログラム開発にも取り組む。簡単な2バンドモデルなどを用いた解析から、一般的な系への拡張を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた国内、国際学会がオンラインによる開催となり、申請書提出時に予定していた支出額よりも少なくなったため。翌年度分についてはオープンアクセス誌などへの掲載料や国際学会への参加費に充てる予定である。
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[Presentation] 第一原理計算によるカゴメ格子磁性体 Fe3Sn における 異常ネルンスト効果の予測と検証2022
Author(s)
見波将, Taishi Chen , 酒井明人, Yangming Wang, Zili Feng, 野本拓也, 平山元昭, 石井梨恵子, 是常隆, 有田亮太郎, 中辻知
Organizer
日本物理学会第77回年次大会
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