2020 Fiscal Year Research-status Report
超音波照射による神経変性疾患蛋白質の特異的増幅の研究
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20K22484
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中島 吉太郎 大阪大学, 国際医工情報センター, 特任研究員(常勤) (20867337)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | アミロイド線維 / ソノケミストリー / 超音波化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
透析アミロイドーシスの原因蛋白質であるβ2ミクログロブリンを用いて、超音波音場下におけるアミロイド線維シード分子の増幅反応機構に関する実験的研究を実施した。実験においては、先行研究で明らかにしたアミロイド線維形成反応を加速するための最適周波数である30kHzの超音波照射を用いた。結果として、超音波を用いて純系溶液中で100fMの極微量アミロイド線維シード分子を超音波を用いることにより加速的に検出できることを明らかにした。またその機構において、超音波は初期核形成反応と線維分断反応の2つの反応経路を同時に加速していることを反応速度論を用いた理論的解析により明らかにした。また、理論解析を用いた考察により、この2つの反応経路のうち初期核形成反応の促進を最小化しながら、分断効果を最大化することによりさらなる特異的な線維シード検出能力の向上が見込まれることが示唆された。この課題に対してさらなる研究を進めるための自作の実験装置の構築も進捗しており、今年度は研究を発展させることができる状況である。 上記の研究成果は、第41回Symposium on ultrasonic electronics(USE2020・国際学会)で口頭発表を行い、Young Scientist Awardを受賞することができた。また、成果をまとめた論文を超音波科学の分野で権威のある雑誌であるUltrasonics Sonochemistry(インパクトファクター:6.513)に発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画として、研究の初期段階には、人工蛋白質を用いて蛋白質分子がアミロイド線維を添加したシードを起点として伸長する際の超音波の効果を探る計画であったが、これについて、知見を得て学術論文として成果をまとめ発表することができた。また、得た知見に基づきさらなる研究の発展のために必要な自作の実験装置の設計と大まかな製作を完了することができた。また、生体試料を用いた研究も予定より早くスタートすることができており、当初の計画以上に研究が進展していると考える。生体試料を用いた研究においては、シード分子の検出も重要であるが、他の血中蛋白質もアミロイド線維反応に多大な影響を示すことがわかってきた。 学会発表や共同研究については、COVID-19感染拡大の影響で現地での打ち合わせは実施できていないものの、オンライン学会での発表やオンライン会議システムを用いた研究打ち合わせを行うことにより、計画に支障なく研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、自作の実験装置を用いて、超音波によるアミロイド線維シードの増幅反応に関する知見を得る実験的研究を推進する。現在、装置は設計・物品調達・動作確認が完了しており、次に装置の操作インタフェースを設計し、実験を実施する。完成した装置を用いて、セミロイド線維シードの増幅反応の周波数依存性を調査し、その機構について考察をおこなうことを目指す。さらに、パーキンソン病患者の髄液を用いたアッセイを行い、実際の患者検体中の線維シードを検出する際に、夾雑物のない組み換え蛋白質溶液中の反応度どのような違いが生じるかを研究する。得られた成果は、都度、学術論文として発表することを目指し、国内・国際学会で積極的に成果を発信する計画である。共同研究や学会発表に伴う出張に関しては、COVID-19の感染拡大状況を鑑みた大学の活動指針に従い、研究を推進する計画である。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、COVID-19の影響により予定していたすべての出張がキャンセルになったため、持越しが生じた。当該の打ち合わせ等は、移動等に関わる規制が緩和されたのちに実施する予定である。 一方で、物品費に関しては、実験に使用する蛋白質を自家培養・精製により作成しているβ2ミクログロブリンに絞って実験を進めてきたため、試薬などの面において、持越し額が発生した。今年度アミロイドβなどの蛋白質に実験対象を拡げる際に、持ち越した予算で当該の蛋白質やその実験時に新たに必要となる物品を購入する計画である。
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