2021 Fiscal Year Research-status Report
ハーフメタル型Co系ホイスラー合金を用いたスピン三重項ジョセフソン接合の実証
Project/Area Number |
20K22487
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
藤田 裕一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, ICYS研究員 (40874459)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | ホイスラー合金 / ハーフメタル / 巨大磁気抵抗効果 / 超伝導薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超伝導体のロバストな位相シフトを誘起するため,ハーフメタル型Co系ホイスラー合金を用いたスピン三重項ジョセフソン接合 (スピン三重項JJ)の実証を目指す.当該年度は,Co系ホイスラー合金層のハーフメタル性に関する詳細な探索を行った.スパッタリング法を用いて,Co系ホイスラー合金Co2Fe0.4Mn0.6Si(CFMS)層を有する独自構造(CoFe/CFMS/Ag/CFMS/CoFe)のエピタキシャル面直通電型巨大磁気抵抗(CPP-GMR)素子を作製し磁気抵抗(MR)測定を行なった.CoFe/CFMS/Ag/CFMS/CoFe構造のCPP-GMR素子において,従来構造(CFMS/Ag/CFMS)と比べてMR出力の増大を観測した.第一原理バリスティック伝導計算やスピン依存伝導の理論計算の結果と比較し,このMR出力の増大がCFMSのハーフメタル性に起因するCFMS/CoFe界面の強いスピン非対称性によるものであると結論づけた.以上の課題と並行して,スピン三重項JJ用の超伝導電極材料として,高い理想超伝導転移温度と化学的安定性を有する窒化ニオブ(NbN)に注目し,エピタキシャルNbN薄膜の表面形態の改善と,その上へのエピタキシャルCo系ホイスラー合金薄膜成長のプロセスを開発した.MgO基板上にCrバッファ層を形成し,その上にNbターゲットを用いた窒素ガス導入による反応性スパッタリング法によりNbN層を形成した後,ポストアニール処理(800 ℃)を施すことで,平均面粗さが0.17 nmの非常に平坦なエピタキシャルNbN層を実現した.表面を平坦化したNbN層上へのエピタキシャルCo系ホイスラー合金薄膜の作製にも成功した.本プロセスはスピン三重項JJを含む超伝導デバイスのプラットフォームの作製プロセスとして有望である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ハーフメタル型Co系ホイスラー合金を用いたスピン三重項ジョセフソン接合(スピン三重項JJ)の実証に挑戦することが目的である.当該年度は,CPP-GMR素子の実験で確立した成膜技術を用いて,ハーフメタル型Co系ホイスラー合金層/非磁性体層/強磁性体層/超伝導体層のエピタキシャル多層構造(三重項スピンバルブ)を作製し,スピン三重項超伝導のハーフメタル型Co系ホイスラー合金中での生成を検証した.スピン三重項超伝導生成の証拠となる臨界温度の外部印加磁場方向依存性を観測したものの,超伝導体層の臨界温度の外部磁場方向依存性など,他の効果の寄与も同時に観測された.三重項スピンバルブの磁化曲線などの評価結果から,今後は,材料と素子設計を詳細に探索することで,ハーフメタル型Co系ホイスラー合金層と強磁性体層間の磁化配置の制御性を向上させ,高効率なスピン三重項超伝導生成(臨界温度の外部印加磁場方向に対する強い依存性)の観測を目指すことが重要となるという指針を見出した.スピン三重項超伝導生成の明確な実証には至っていないものの,重要な指針を見出したことからおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
三重項スピンバルブ中のハーフメタル型Co系ホイスラー合金層と強磁性体層間の磁化配置の制御性を,材料と素子設計を詳細に探索することで向上させ,両者間の強固なノンコリニア磁化配置を実現し,高効率なスピン三重項超伝導生成(臨界温度の外部印加磁場方向に対する強い依存性)を実証する.
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Causes of Carryover |
学会のオンライン開催に伴い,当初予定分の旅費を使用しなかったため,次年度使用額が生じた.ハーフメタル型Co系ホイスラー合金を用いた三重項スピンバルブ構造の材料と素子設計の詳細な探索のため,スパッタリング用ターゲット材と計測器の追加購入にこれを充てる予定である.
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Research Products
(5 results)