2020 Fiscal Year Research-status Report
免疫療法抵抗性がんを克服する超音波応答性バブルの新規抗PD-1抗体併用療法の開発
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20K22505
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
宗像 理紗 帝京大学, 薬学部, 助教 (90879694)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 抗PD-1抗体 / がん免疫療法 / バブル / 超音波 / Immunogenic cell death |
Outline of Annual Research Achievements |
抗 PD-1 抗体によるがん免疫療法において、免疫原性の低いがん種における奏効率の向上が課題となっている。本研究では、超音波応答性バブルが超音波照射されて圧壊した際に生じるエネルギーを利用してがん細胞を傷害し、がん関連抗原の放出や免疫原性細胞死 (Immunogenic cell death; ICD) を誘導することで、免疫抑制的な腫瘍免疫微小環境から抗腫瘍的な環境への転換を試みる。この治療法を抗 PD-1 抗体治療に併用し、免疫療法抵抗性がんの奏効率向上を目指す。 本年度では、超音波応答性バブルと超音波照射による治療が、抗 PD-1 抗体の治療効果を増強しうるか、担がんマウスで検討した。本検討では、超音波応答性バブルとして、perfluoropropane (C3F8) を内包し、外殻がリン脂質で構成されたマイクロバブルを使用した。がん細胞を皮内移植してモデルマウスを作成し、腫瘍生着後に超音波応答性バブルを静脈内投与後、直ちに腫瘍へ超音波照射した。処置の翌日から抗 PD-1 抗体を腹腔内に反復投与し、腫瘍体積を指標に抗腫瘍効果を評価した。その結果、超音波応答性バブルと超音波照射による治療群および抗 PD-1 抗体治療群で抗腫瘍効果は認められなかった。一方、超音波応答性バブルと超音波照射による治療後、抗 PD-1 抗体治療を併用した群で抗腫瘍効果が認められた。このことから、超音波応答性バブルと超音波照射による治療が腫瘍組織の免疫環境に影響し、抗 PD-1 抗体の治療効果を増強したと考えられた。本研究成果は、超音波応答性バブルと超音波照射の治療が免疫療法抵抗性がんの克服において有用なアプローチであることを実証した重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超音波応答性バブルと超音波照射による処置が腫瘍細胞に与える影響を評価するには、in vitro と in vivo で使用する超音波照射条件に乖離が生じた。そのため、治療効果の検討 (in vivo) を優先的に着手するなど計画の変更が必要となった。しかし、腫瘍組織内に浸潤している免疫細胞の解析系が確立されたため、今後、治療効果のメカニズム解析が推進されると判断したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果により、超音波応答性バブルと超音波による治療が抗 PD-1 抗体の治療効果を増強することが明らかとなったため、今後抗腫瘍効果におけるメカニズムを解析する。治療後に腫瘍内に浸潤する免疫細胞を解析し、治療効果において重要な役割を担う細胞や因子の特定を行う。また、他の免疫療法抵抗性がんに対する治療効果の評価や、超音波応答性バブルおよび超音波照射条件の最適化を進める。
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Causes of Carryover |
実験の実施に際して計画変更の必要性が生じ、物品の購入に影響したため。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、学会に参加する際の旅費が発生しなかったため。 次年度は、治療効果のメカニズム解析など in vivo での検討に使用する動物や試薬の追加購入があること、また、学会発表や論文投稿準備を進めるため、未使用分をこれらに充てる。
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