2021 Fiscal Year Annual Research Report
加圧装置組み込み型新規完全液体換気システムの構築:急性肺障害の治療に向けて
Project/Area Number |
20K22506
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
垣内 健太 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30875422)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 酸素運搬体 / 過飽和酸素 / 液体換気 / 急性肺疾患 / ARDS / 肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
完全液体換気(TLV: Total Liquid Ventilation)はガスの代わりに液体を用いる人工呼吸法であり、致死率が27-45%と高い急性呼吸窮迫症候群の治療法として確立が期待されている。我々は、酸素ファインバブル(微小気泡)を分散させたリン酸緩衝生理食塩水を用いたTLVシステムを構築し、その有用性を示してきた(従来システム)。しかし、従来システムには酸素供給量が足りないという課題があった。そこで、我々は、加圧条件下で酸素過飽和水を調製し、過飽和状態を維持したまま肺に高酸素含有水を運搬する新規TLVシステムを発案し、その確立を目指している。 今年度は、昨年度構築した新規TLVシステムを用いて動物実験を行った。その結果、1回の呼吸で運搬できる液体量が従来のシステムと比較して50-70%に減少してしまった。これは、過飽和酸素水の1部が肺内部で気泡化して気道を閉塞したことが原因だと考えられる。しかし、運搬できる液体量が減少したのにも関わらず、液体は高酸素量を含有しているため、血液ガスおよび血行動態から評価したラットの生理状態は、従来システムと比較して良好であり、新規TLVシステムの可能性を示唆する結果が得られた。従来システムからの改善は確認されたが、今回最も状態が良かったラット(PaO2: 46 mmHg, SaO2: 75%, 血圧: 77.8 mmHg, 心拍数:349 bpm)においても低酸素状態を克服したと主張できる結果ではなかったため、減少した換気量を改善させる工学的な改良が必要である。 一方、新型コロナウイルスの蔓延に伴い共同研究先での動物実験が実施できなかった期間、ファインバブルおよび過飽和酸素に関する基礎研究を実施し、過飽和溶存酸素を測定できる液中酸素測定方法の論文発表、およびファインバブルの新たな物性を明かにした研究を学術論文にまとめた(査読中)。
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Research Products
(3 results)