2020 Fiscal Year Research-status Report
赤外プラズモニクスを活用した電気化学反応の新規振動分光法の開発
Project/Area Number |
20K22518
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森近 一貴 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60885391)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 振動分光 / 非線形分光 / 電気化学反応 / プラズモニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
電気化学反応のメカニズムを解明するためには,電極界面における反応物・中間体・生成物の構造を分子レベルで理解することが不可欠である.こうした分子レベルの知見を非破壊的かつその場で測定できる有力な手法として赤外非線形分光法が挙げられるが,本質的に測定感度に乏しいという欠点がある.そこで本研究では,金属ナノ構造の表面プラズモン励起に伴う電場増強効果を利用した,電気化学反応を高感度に計測できる新規赤外非線形分光法の開発を目指して研究を行っている. 本年度は,作用電極として用いる金属ナノスリット構造および電気化学セルの設計を行った.有限差分時間領域法に基づく電磁場解析により,対象とする分子振動の共鳴周波数でプラズモン共鳴を示す金属ナノスリット構造が得られ,高い電場増強度を示すことがわかった.また,作用電極基板の裏面から赤外光を照射し,その反射光を取り出せるような電気化学セルを独自に設計した.従来の赤外分光用電気化学セルは,プリズムを用いたATR配置のものが主流であるが,今回設計したセルはプリズムが不要なため入射角に制限が無く,取り扱いやすいという利点をもつ. さらには,赤外非線形分光系の構築にも取り組んだ.大気中の分子による光吸収の影響を避けるため,光路長をなるべく短くし,系全体を自作のアクリルボックスで囲うことで窒素パージをできるように設計した.実際に系を窒素パージして赤外非線形分光計測を行い,大気の光吸収の影響を十分に抑えて信号を取得することに成功した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り,本年度は作用電極として用いる金属ナノスリット構造および反射分光用の電気化学セルの設計,さらには赤外非線形分光系の構築を進め,いずれも良好な成果が得られた.特に,大気中の分子による光吸収をいかに抑えられるかが本研究の大きな課題の一つであったが,綿密な設計と幾度かの改良により,大気の光吸収の影響を十分に抑えて信号を取得することに成功した.以上の理由により,「(2)おおむね順調に進展している。」と言える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,金属ナノスリット構造を作用電極とした電気化学反応系の構築およびそれを用いた赤外非線形分光実験に取り組む.具体的には,設計した金属ナノスリット構造を電子線描画プロセスにより作製し,電子顕微鏡および赤外分光測定により構造を評価する.そして,作製した構造を作用電極とした電気化学反応系を構築し,サイクリックボルタンメトリーによりその性能を評価する.次に,構築した系を用いて赤外非線形分光実験を行い,プラズモン共鳴を用いた場合と用いなかった場合で得られる信号から信号増強度を見積もり,本手法の有用性を定量的に明らかにする.
|