2021 Fiscal Year Annual Research Report
双極子の環状整列に基づく有機分子性キラル光学特性の制御
Project/Area Number |
20K22528
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 研一 京都大学, 工学研究科, 助教 (10879406)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | キラル光学特性 / 環状有機分子 / 対称性 / 双極子 / 不斉伝達 / スルースペース相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では上下の縁に異なる置換基を持ったキラル環状分子ピラーアレーンの開発とキラル光学特性の評価に取り組んだ。 片縁に嵩高いシクロヘキシル基を有するピラーアレーンの残りの縁に鈴木-宮浦カップリングを用いてパラ置換フェニル基を導入することで、環斜め方向に双極子モーメントを有する一連の環状共役分子を合成した。残念ながらパラ位にニトロ基またはジメチルアミノ基を有する分子の光学分割は困難であったものの、単純なフェニル基に加えてアルコキシおよびエステル置換体の分離に成功した。双極子の大きさに応じた光学応答の変化を調査し、分極構造が明確な電子不足なエステル体で応答波長の伸長と発光量子収率の増大、キラル応答の程度を示す非対称性因子の顕著な減少が見られることを明らかにした。応答波長は400 nm以下にとどまったものの、アルコキシ置換体の非対称性因子はピラーアレーン分子系の中で最大の値を示した。 ピラーアレーンをキラル源としてのみ活用して片縁にピレン環を環状整列させる分子群についても、適度な極性と溶解性を示すエステル置換基を付加することで合成および光学分割を達成した。これら分子はピラーアレーンとピレン環を隔てる部分の構造および観測濃度に依存した光学応答を示し、ピレンのエキシマーに帰属される500-600 nmの領域で前述の分子よりもさらに大きな非対称性因子も見られた。 また、本研究で得られた鈴木-宮浦カップリングの条件を適用することで、これまで合成の難しさから報告が無かったピラーアレーンの全置換位置にアリール基を導入した分子群を合成した。以前のアルキニル基を導入した分子では構造異性体の分離が不可能とされていたが、今回の分子ではキラルカラムを用いた異性体分離が可能で、異性体間で光学特性の比較が可能であった。
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Research Products
(15 results)