2020 Fiscal Year Annual Research Report
迅速な集合体形成を活用した化学酵素重合による単分散ポリペプチドの合成
Project/Area Number |
20K22530
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 拓巳 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (20880678)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2021-03-31
|
Keywords | ポリペプチド / 化学酵素重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリペプチドはアミノ酸から成る高分子であり、アミノ酸配列にプログラムされた生体認識性等の高機能を示すことから、選択性的な薬剤投与システムなどの次世代ナノテクノロジーにおいて大きな注目を集める。しかしながら、一般的な合成手法では多段階の合成・精製プロセスを要すること、スケールアップが難しいこと、大量の有機溶媒を要することから、製造コストが著しく高く、ポリペプチドの汎用的な使用には大きな障壁がある。 そのような中、本研究では化学酵素重合法に着目した。加水分解酵素の逆反応であるアミノリシス反応を活用する本手法は、ポリペプチドを簡便かつ大量に、水系反応で合成できる。しかしながら、固相法などと比較し、得られるポリペプチドの分子量分布が比較的広いことが課題であった。そこで、本申請では、重合中の高分子の沈殿を停止反応として捉え、重合中に形成するポリペプチドの沈殿速度やその機構を精査することで、化学酵素重合方により、分子量分布が整ったポリペプチドの合成を目指した。 親水性アミノ酸であるセリンの誘導体モノマーを使用した化学酵素重合を実施すると、重合後に白色の沈殿物が得られた。質量分析法により、沈殿物がポリセリンであることが明らかとなった。しかし、分子量分布は比較的広く、単一分子量体のポリセリンは得られていない。また、赤外吸収分光法や、円偏光二色性スペクトル測定による沈殿物の二次構造評価より、ポリセリンがβシート構造を形成していることが明らかとなった。このことより、ポリセリンが単なる疎水性相互作用により析出しているのではなく、βシート構造の形成により水中から析出していることが明らかとなった。今後、疎水性相互作用による析出ではなく、二次構造までも考慮して条件を最適化することで、ポリペプチドの分子量分布の制御を実現できる可能性がある。
|