2020 Fiscal Year Research-status Report
星間塵表面における水素分子の核スピン転換過程のin-situ非線形ラマン分光観測
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20K22540
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
鶴岡 和幸 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 特任研究員 (80884775)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 非線形分光 / 水素分子 / スピン転換 / 星間塵 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間分子雲に存在する水素分子の核スピン温度は、周囲環境の過去の情報を持ち、分子雲の年齢や星形成メカニズムの解明のための鍵となる。しかし、核スピン温度がどの程度の過去を反映するかを知るには、分子雲内に存在する星間塵でスピン転換が起きる条件を定量的に解明する必要がある。そこで真空装置内に星間分子雲環境を再現し、スピン転換の計測を実施する。本年度は以下の研究を行った。 「非線形分光のための光学系立ち上げ」研究室所有の Ti:サファイアレーザー の基本波(800 nm)を分岐し、800 nm の基本波を狭帯域のωp光及び広帯域のωs 光にそれぞれ変換することに成功した。 また,低温基板表面に多層吸着可能水分子の非線形分光計測にも成功し,星間分子雲環境の再現実験にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画を進める上で必須である光学系の立ち上げを完了し、星間分子雲環境の再現実験にも成功した。スピン転換の解明に必要となる実験的準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
「極低温動作環境の実現」固体表面上の極低温物理吸着種を研究ターゲットとするために,所属研究室に所有の超高真空装置の試料ホルダーに熱輻射シールド等の冷却設備を増設する。 「表面基板の調整」炭素質や珪酸塩から成る星間塵のモデル基板として、本研究ではグラフェン、及びSiO2の表面を対象とする。グラフェンは金属基板上での炭化水素分子系の化学蒸着法により作製し、低速電子線回折 (LEED) 法によってその構造を評価する。 「オルトーパラ転換計測」分子雲環境を再現した極低温超高真空装置を用いて、炭素質及び珪酸塩等の星間塵モデル鉱物の単結晶表面に対して、10 K 近傍で系統的に表面温度を変え、各表面におけるオルト-パラ転換過程を非線形分光で観測する。
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