2021 Fiscal Year Annual Research Report
固体電気化学に基づく熱力学的な制約を超えた新規酸素欠損量制御法の創製
Project/Area Number |
20K22544
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩崎 秀 北海道大学, 電子科学研究所, 博士研究員 (30888136)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 異方的イオン拡散制御 / 化学ポテンシャル / 固体電気化学 / 酸素欠損 |
Outline of Annual Research Achievements |
強固なフレームワーク構造にイオン種が弱くトラップされた化合物群を対象として、イオン種のみを制御することで準安定相の合成を可能にする異方的イオン拡散制御(Anisotropic ion Diffusion Control, ADC)法を開発した。ADC法を実証するために、(i)Na24Si136からのNaイオン抜去、および、(ii)Sr2VFeAsO3-dからのOイオン抜去を行った。
(i) Na24Si136はSiのケージ状フレームワーク構造にNaが弱く内包された化合物である。Naが完全に抜去されたSi136は直接遷移型のバンドギャップを有することから、光電変換素子への応用が期待されている。Na24Si136からのNa抜去に際して、ADC法を用いることで、近年合成が可能となったミリメートルオーダーのシングルドメインの単結晶から均一にNaを抜去することに成功した。さらに、Siのケージ状フレームワーク構造をNaが拡散するという実験事実を説明するために、Siの欠陥生成を考慮した拡散モデルを提唱した。これを非経験的計算により検証し、欠陥を介した拡散モデルが実験事実と矛盾しないことを確認した。 (ii) Sr2VFeAsO3-dはSr2VO3-d層とFeAs層からなる複合アニオン層状化合物(Mixed-Anion Layered Compounds, MALC)である。この化合物は酸素量に応じて、電子・磁気状態が変化することが知られている。したがって、Sr2VFeAsO3-dの機能を引き出すためには酸素量を制御する技術が必要である。そこで、ADC法を用いることで酸素量を制御することに成功した。
以上のように、本申請ではイオン拡散制御による準安定相を合成するための基盤技術を確立した。今度、本手法により新規準安定相が発見されることが期待される。
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Research Products
(17 results)