2022 Fiscal Year Annual Research Report
溶媒分子置換反応による極性変換を基盤とした協奏的機能開拓
Project/Area Number |
20K22557
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
小林 文也 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (90884205)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 機能性金属錯体 / 極性集積構造 / 誘電特性 / 発光特性 / 溶媒蒸気応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、溶媒蒸気曝露による極性集積構造の変換が可能な単核アルミニウム(III)錯体[Al(sap)(acac)(solv)] (solv = MeOH, EtOH, DMSO)に関して、誘電率測定・強誘電ヒステリシス測定・圧電力応答顕微鏡(PFM)による分極ドメイン観察を行った。極性集積構造を形成しているDMSO体では、MeOH体およびEtOH体と比較して約4倍の比誘電率を示すことが明らかとなった。DMSO体の結晶サンプルおよびペレットサンプルを用いた強誘電ヒステリシス測定の結果、明確なヒステリシス挙動は観測されなかったが、結晶サンプルの方が大きなヒステリシスを示すことが分かった。これは十分な結晶性を有したサンプルが作製できなかったためであると考えられ、薄膜試料や単結晶試料の作製により改善可能であると考えられる。また、DMSO蒸気曝露前後におけるPFM観察を行ったところ、MeOH体では顕著な常誘電体挙動が観測されたのに対して、DMSO体では明確な強誘電体ドメインの形成が観測された。これらの結果から、溶媒蒸気曝露による集積構造変換によって極性分子配列および誘電特性の制御が可能であることが示唆された。また、配位子のπ共役系を拡張した誘導体配位子を用いることによって、配位溶媒の違いに起因した集積構造変化により、異なる発光色を示す新規単核アルミニウム(III)錯体の合成に成功した。この系においてもDMSO分子が配位した化合物は極性集積構造を形成することが明らかとなり、極性集積構造変換ならびに発光色変化が協奏的に起きる系の開発に成功した。
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