2020 Fiscal Year Annual Research Report
血管疾患における2SC変動機構の解明と食品成分による制御
Project/Area Number |
20K22569
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
白河 潤一 東海大学, 農学部, 特任助教 (00647654)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2021-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 食品成分 / LC-MS/MS / 2SC |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア内のTCA回路中間体であるフマル酸は過剰に蓄積することでシステインのチオール基に反応し、S-(2-succinyl)cysteine (2SC)を生成する。2SCは様々なタンパク質中で生成し、生体環境に変化を及ぼすことでミトコンドリア機能異常と病態とをつなぐ役割を担っていることが明らかになってきている。これまで血液等の生体試料における2SCの高感度測定は困難であったが、申請者らは液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-MS/MS)による生体試料中2SCの高感度定量系を確立し、血清中の2SCが血管疾患の発症に伴い増加することを明らかにした。そこで本研究計画では、血管疾患における2SC増加メカニズムの解明および2SC生成抑制作用を有する食品成分の探索を行った。 特に令和2年度は細胞実験を用いた研究を遂行した。脂肪組織の炎症モデルである脂肪細胞とマクロファージによる非接触型共培養を用いて、炎症反応における細胞中および培地中2SC値の変化を測定し、新たな2SC生成メカニズムの解明を試みた。その結果、マクロファージの分泌する炎症性サイトカインが脂肪細胞のフマル酸分泌量を顕著に増加させ、2SC生成を促進していることが明らかとなった。さらに増加したフマル酸はマクロファージにおける炎症反応の惹起に関与することも示され、高濃度のフマル酸が血管周囲脂肪組織の炎症促進因子となることや、2SCが脂肪組織の炎症反応を検出するマーカーとして利用できる可能性も示された。また、2SCが増加した共培養条件下においてリンゴ果皮抽出物を添加すると、2SC値が有意に減少することが明らかとなった。本結果から、リンゴ果皮に含まれる成分が炎症反応を抑制し、2SCを減少させたと考えられる。
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