2020 Fiscal Year Research-status Report
Correlational analysis of the glycometabolism and functionalities of probiotic lactic acid bacteria.
Project/Area Number |
20K22573
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
須志田 浩稔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 研究員 (10885510)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / プロバイオティクス / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では乳酸菌のプロバイオティクス機能の主要因となる腸管粘膜への定着性に焦点を当て、これに関与するムチン結合性タンパク質、およびその生産に影響を与える糖代謝経路を同定し、成果情報を統合した乳酸菌株の迅速選抜法の構築を目指す。 本年度は、プロバイオティクス候補菌株である乳酸菌Lactococcus lactis subsp. cremoris 7-1株のゲノム情報を整理し、腸管粘膜への定着時に機能すると予測されるムチン結合性タンパク質群の推定と既知菌株との比較、および生産制御機構の解析を行った。 7-1株の染色体ゲノム中にコードされる2560のタンパク質を対象としてタンパク質ドメインデータベースPfamを用いた解析を行い、22の推定ムチン結合性タンパク質を見出した。続いて、既知のプロバイオティクス6属13種15菌株で同様の解析を行い、タンパク質の機能分類と数の比較を行った。ムチン付着(MucBP)、細胞外マトリックス結合(LysM)、フィブロネクチン結合(Fbp)等のドメイン分類に基づき機能性タンパク質をカウントした結果、既知菌株群は保持する機能性ドメインに種レベルでの偏りが見られた一方、7-1株は複数の機能性ドメインを網羅的に保持しており、広範な標的分子に対する結合能を有すると推測された。 さらに、7-1株では培養時の炭素源がムチン付着性に影響を及ぼすことが報告されている。炭素源別の生育および菌体成分とムチン付着性との相関は見出されておらず、糖代謝依存的なムチン付着性タンパク質の生産制御が行われていると推測した。解析の結果、7-1株のゲノム中から糖の取り込みと遺伝子発現制御に関与する15のPhosphotransferase system(PTS)遺伝子が同定された。染色体上では複数の推定ムチン付着性タンパク質がPTSの近傍に位置しており、発現制御との関連が予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた機能性タンパク質精製には至っていないものの、バイオインフォマティクスによる解析で十分な成果が得られており、次年度の研究遂行に向けた基盤情報整備は達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、7-1株が有するムチン付着性因子と生産制御系の解明に向けた基盤的な情報整備を行った。次年度では実証に向けた研究計画に従い、初年度に推定したムチン付着性関連遺伝子およびPTS遺伝子を標的としたqPCR、およびRNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を炭素源別の培養条件下で行う。有意な発現変動が見られた遺伝子については炭素源別のムチン付着性との相関を解析した上でタンパク質精製とin vitroでのムチン結合性試験を行うとともに、プロバイオティクス乳酸菌のスクリーニングにおけるPCRマーカーとしての有効性を評価する。
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Causes of Carryover |
ゲノム情報の整備により標的因子が絞り込まれたことで、初年度に計画していたメタボローム解析およびタンパク質スクリーニングを次年度に行う発現解析後の機能性検証に置き換えたため、効率的な予算使用が必要となった。次年度で予定するRNA-seqとタンパク質精製に要する試薬類は高額であるため、初年度に未使用分の予算を用いることで十分な解析が可能となる。
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