2021 Fiscal Year Research-status Report
体長の性差を生み出すメカニズムから解き明かす養殖魚の商品価値の向上に向けた研究
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20K22587
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加用 大地 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (40880373)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 体成長の性差 / エストロゲン合成酵素 / 脂質代謝 / メダカ / 精巣移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
cyp19a1bノックアウト(KO)メダカにおいて観察される、体成長の性差消失の表現型解析およびその原因となるメカニズムの解析を行った。cyp19a1bKOオスメダカにおいて観察されていた体成長の増加に関して、肝臓・骨格筋のメタボローム解析および代謝関連遺伝子発現量の定量PCR解析から、KOオスにおいて代謝経路の異常が観察された。また、cyp19a1bKOによる性ステロイドホルモンレベルの変化が、これらの代謝経路異常を引き起こしていることが明らかとなった。これに加え、cyp19a1bKOオスの生理的な性ステロイドレベルを操作する外科的手術・手法を開発する過程で、部分的に去勢した宿主の腹腔に同種他個体(ドナー)の精巣組織を埋め込むだけでドナー由来の精巣組織が免疫的な拒絶を受けることなく生着することを発見した。この宿主を自然交配させて得られた次世代のなかには、ドナーの精子に由来する仔が複数得られ、移植精巣が機能的であることを確かめた。さらに、移植精巣をもちいた組織学的な解析から、生殖細胞のみならずセルトリ細胞やライディッヒ細胞を含んだ体細胞由来の精巣組織も同時に他個体に受容されていることを示した。予想外に明らかとなったこれらの事実は、凍結精巣を用いた系統保存の技術と組み合わせることが期待され、応用を見据えた新規の研究へとつながる可能性がある。cyp19a1bKOメスメダカの摂食量が減少していた表現型について、その原因となる摂食関連遺伝子のKOメダカの摂食量を解析した。結果は予想に反して摂食量に有意な変化はみられなかった。今後は候補遺伝子のもう一方のサブタイプによる補償が起きている可能性を検証するため、候補遺伝子のダブルノックアウト個体などを用いて、体成長の性差を生み出す摂食調節制御に関与しているかどうかを検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cyp19a1bKOメダカの雌雄において観察される表現型の解析を予定通り進めることができた。加えて、同種他個体の精巣移植が可能であるというまったく新規の発見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
cyp19a1bKOメスメダカの摂食量減少の原因をより詳細に示すため、摂食調節候補遺伝子のもう一方のサブタイプを含めたダブルKOメダカの解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究により得られた成果を論文として投稿することを予定しておりその投稿費用の確保のため。
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