2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K22590
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 亮介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (10881443)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | ケイ素集積 / 熱帯林 / 土壌風化 / 樹木 / 落葉 / 物質循環 / 土壌鉱物 / 山地林 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はカウンターパートである中米パナマのスミソニアン熱帯研究所にて、調査地であるパナマのバロ・コロラド島、サンロレンソにおいて土壌試料を採集し、水抽出によるケイ素可給性の定量に取り組んだ。また、パナマ西部のフォルトゥナにおいては、同地で保管されている植物標本試料の一部を共同研究者から譲り受け、炭酸ナトリウムを用いたアルカリ抽出によりケイ素を溶解し、比色法によって葉におけるケイ素含量を定量した。これらの調査、分析手法は、実施責任者が東南アジアのマレーシアを中心とした地域で行ってきた一連の方法と同一であり、得られたデータを元にこれまでの成果との比較検討を行なった。東南アジアのキナバル山においては、標高と樹木のケイ素集積の関係が明瞭で、低標高であるほど葉におけるケイ素集積が増加するという結果であった。一方で今回調べた中米パナマの同様の標高傾度においては、キナバル山と同じパターンが認められなかった。これは地域間で異なる種組成の違いを大きく反映していると考えられ、例えば中米パナマにおいては、低標高だけでなく、中程度の標高(1800-2300 m付近)でも葉にケイ素を多く集積する種が出現していた。これらの中程度の標高でのケイ素集積種はニレ科といったような温帯地域においてもケイ素集積が平均的に高いと認識されている特定の系統群に属することがわかってきた。土壌に関しては、表層土壌からのケイ素可給性と樹木のケイ素集積との間には関係が認められなかった一方で、深度の深いところからの本来の母材の性質をより反映する土壌(20~50 cm)からのケイ素可給性とは正の関係が認められた。これは群落レベルで見た時のケイ素集積において、深層の土壌からのケイ素可給性も、上述した種組成の要因とともに、少なからず樹木のケイ素集積に影響を及ぼしていることを示していると考えている。
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