2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22611
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
松本 翔馬 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助教 (00881517)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス凍結胚を用いた予備実験から、青色LEDをマウス受精卵に照射しても胚盤胞発生率に影響しないことが明らかになっていた。哺乳類受精卵においては白色光による発生毒性が報告されているため、より詳細な青色LEDによる発生毒性を調べることを目的とし、まずはマウス受精卵1細胞期胚に0, 8, 24時間青色LEDを照射し、胚盤胞発生率を解析した。その結果、1細胞期胚への最大24時間の青色LED照射によっても胚盤胞発生率には影響しないことが明らかになった。さらに青色LEDを8時間照射した胚盤胞をマウス子宮内に移植した結果、胎仔が得られることも確認された。また、青色LEDと培養プレートとの距離を半分にすることで光量を増加させたが、胚盤胞発生率に大きな影響は生じないことが明らかになった。しかし、これら胚盤胞をマウス子宮内に移植したところ、33%の生存個体が得られた光源距離に対し、半分の光源距離で照射される光量を増加させたところ生存個体の割合は20%へと減少した。いずれの照射時間、光量条件においても遺伝子改変マウス作出には大きな影響は与えないことが明らかになった。現在はpaCas9を高効率でマウス受精卵に導入するため、piggyBacトランスポザーゼ(mPB)を利用可能なベクターへの組換えを行っている。paCas9タンパク質は5kbpと長大な配列であるため、1度の組換えでmPBベクターへと組換えることができなかった。そのため、paCas9配列中に特定の制限酵素サイトを新たに導入し、2.4kbpおよび2.6kbpの2つの断片に分け、mPBベクターへの導入を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
paCas9プラスミドのマウス胚性幹細胞(ES細胞)への導入効率が低かったため、現在piggyBacトランスポザーゼ(mPB)により導入可能なプラスミドに再構築し直している。5’および3’ UTRを含むmPBベクターよりクサビラオレンジ配列を除き、そこへpaCas9(split-Cas9にアカパンカビ由来光受容体タンパク質を結合させたタンパク質)配列の導入を何度か試みたが、5kbpの長大なインサートからなるため目的のコンストラクトを得ることができなかった。また、共同研究先の佐藤先生(東京大学)よりいただいたpaCas9ベクターの増幅効率も悪く、大規模な大腸菌培養によっても少量のプラスミドしか得られなかったため、ベクターの組換え作業も遅延していた。現在はより多量のpaCas9ベクターを増幅する培養法を確立したため、再度プラスミドの組換え実験を実施している。これまでは5kbpのインサートを直接mPBベクターへと組換えていたが、現在はpaCas9ベクター内部に制限酵素リンカー配列を新たに導入し、2.4kbp、2.6kbpの2つのフラグメントに分けて導入する方法を試みている。リンカーライゲーション効率も良好ではないため、目的リンカーの導入が困難な場合は新たに目的制限酵素配列を含むアダプターを作製し、導入を試みる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずはpaCas9配列の内部に新規制限酵素サイトを導入し、2段階に分けてpiggyBacトランスポザーゼ(mPB)ベクターへの導入を試みる。新規制限酵素配列の導入はリンカーを用いて実施する予定であるが、リンカーライゲーション効率が低いことから困難である場合、アダプターへと切り替える。paCas9配列が導入された後にpolyA配列を導入することでmPB-paCas9プラスミドを構築する。定法によるプラスミドの作製が困難な場合、大腸菌を用いない新規プラスミド調製方法の1つであるOriCiro Cell-Free Cloning Systemや人工合成による作製も視野に入れる。構築されたプラスミドはまずマウス胚性幹細胞(ES細胞)へとトランスフェクションし、青色LED照射により目的配列のノックインが見られるか検討する。その後、paCas9ベクター、sgRNAおよびGFPドナーベクター、mPB mRNAを顕微受精(ICSI)10時間後のマウス1細胞期胚へと導入し、胚盤胞発生率およびICMにおけるGFPの発現を確認する。最も効率の良い条件については子宮内移植の後出産させ、産子作出効率を産出する。paCas9を用いた高効率遺伝子改変動物作出法が確立された後、ノックダウンベクターを構築し、同定した光量、照射時間でのノックダウン実験へと移行する。ICSI10時間後からのノックインにより遺伝子改変動物作出効率が改善されない場合、青色LEDを照射するタイミングを1細胞期のS/G2期から2細胞期のG2期へと変更し、同様に胚盤胞発生率、産子作出効率を評価する。
|
Causes of Carryover |
paCas9ベクターをpiggyBacベクターなど、高効率に遺伝子導入可能なベクターへの組換えの必要性が生じたため、当初の研究計画に遅れが出ていることが大きな理由の1つである。そのため、マウス受精卵を用いた実験やシークエンスなどといった研究を実施できておらず、本年度にそれら実験や学会での研究成果の発表、学術論文への投稿を行う予定である。また、paCas9部分は5kbpから成る長大なインサートであるため、piggyBacベクターへの挿入も困難を極めることが予想される。したがって、新たに登場した無細胞系でプラスミド構築を行う技術であるOriCiro Cell-Free Cloning Systemや人工合成による目的プラスミドの作製も視野に入れている。
|