2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of DNA damage recognition mechanisms on chromatin by cryo-electron microscopy
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20K22621
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 翔太 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (10880643)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ヌクレオチド除去修復 / XPC / クロマチン / DNA修復 / NER |
Outline of Annual Research Achievements |
ヌクレオチド除去修復 (NER) は紫外線損傷をはじめとする幅広い損傷を修復することが出来る、重要な修復機構の一つである。これまでの先行研究により、NER反応の開始にはXPC複合体がDNA上の損傷を認識して結合することが非常に重要であることが報告されてきた。このXPCが欠損した患者では、色素性乾皮症(XP)と呼ばれる重篤な遺伝病となることがわかっており、XP患者では日光過敏症や皮膚がんの高発、神経変性疾患が主な特徴であることが報告されている。一方、XPC複合体については無細胞NER再構成系により、その分子基盤の詳細が明らかにされてきているが、構造生物学的な理解は限定的であり、特にヒトにおいてXPC複合体がどのような結合構造で損傷を認識しているかについては、不明な点が多く残されている。特に細胞内において、DNAはヒストン八量体に巻き付いたヌクレオソームを基本単位としたクロマチン構造を形成しており、このクロマチン上の損傷をXPC複合体がどのように認識しているかについては、未だに理解が進んでいない。 そこで、研究代表者はバキュロウイルスを用いた昆虫細胞発現系により、ヒトXPC複合体を精製・単離した後、紫外線損傷を含むポリヌクレオソームを再構成し、これらを混ぜ合わせることにより、クロマチン上の損傷に結合したXPC複合体を試験管内で再現する。一方、ヌクレオソーム上の損傷にはXPC複合体が結合出来ない可能性が考えられる。この場合、ヌクレオソーム間を接続するリンカーDNA領域に損傷を配置することにより、クロマチン構造がXPC複合体の損傷認識に与える空間的制約を明らかにしたい。これらの結合構造が明らかになった暁には、さらに下流のNER因子やクロマチンリモデリング因子を加えることにより、細胞内NER反応を試験管内で再現し、クロマチン構造が与える影響についてより詳しく解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昆虫細胞からXPC複合体を発現・精製するために、まずバキュロウイルスゲノムをSf9細胞にトランスフェクションすることにより、XPC複合体の構成因子であるXPC、RAD23B、centrin2をコードするバキュロウイルスを作製した。ここで、これらのそれぞれのタンパク質を発現するウイルスを作製し、High Five細胞に感染させることで、XPC複合体をHigh Five内で発現させることを試みた。RAD23BにはStrepタグを融合しており、Strepタグによる簡便なプルダウンを行ったところ、XPC、RAD23B、centrin2の全ての因子がStrepビーズ特異的にプルダウンされることが確認出来た。次にHigh Five細胞を大量培養し、同様にウイルス感染を行うことにより、XPC複合体の大スケール精製を試みた。ウイルス感染したHigh Five細胞を溶解バッファーにより溶解した後、超音波処理を行うことにより、XPC複合体を可溶化し、これを細胞抽出液とした。ここで得られた抽出液を、それぞれHeparinカラム、Strepカラム、陰イオン交換カラム、ゲルろ過カラムを通すことにより、ヒトXPC複合体を精製することに成功した。一方、DNAについては、ミスマッチを含む50塩基対のDNA断片を化学合成し、これを基質としてゲルシフト法により、XPC複合体が結合するかどうかを確認した。NATIVE-PAGEで電気泳動した結果、XPC複合体存在化でのみDNAのバンドシフトが見られたため、得られたXPC複合体はミスマッチDNAと結合することが示唆された。次にこのミスマッチDNAとXPC複合体を混ぜ合わせ、DNA-XPC複合体を単離した後にクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)により観察したところ、DNA-XPC複合体と見られる粒子が多く認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により、研究代表者はミスマッチを含むDNAとヒトXPC複合体のcryo-EM観察に成功した。今後は得られたcryo-EM画像を元に、ミスマッチDNAに結合したXPC複合体の立体構造を明らかにする予定である。一方、ここで得られる結合構造は裸のDNAに対するものであり、実際の細胞内ではクロマチン構造上の損傷に結合している可能性が考えられる。そのため、ここで得られるDNAへの結合構造を参考に、ヌクレオソームやクロマチン上のミスマッチについて、どのように結合するかどうかを解析し、XPC複合体が結合すると予想される基質の作製を行う。まずはヌクレオソーム上、あるいはヌクレオソーム間のリンカーDNAなど様々な位置にミスマッチを配置することで、ヌクレオソームのどの部位の損傷に対してXPC複合体が結合するかを明らかにする。XPC複合体が結合することが確認された基質については、試験管内で基質とXPC複合体を混ぜ合わせた後、ヌクレオソーム-XPC複合体の単離を行い、単離された複合体についてcryo-EMによる観察を行う。これにより結合構造が明らかになった暁には、ポリヌクレオソームからなるクロマチン構造を試験管内で再構成することにより、より高次のDNAにおけるNER反応を再現し、細胞内に近い状態の損傷修復反応の立体構造解析を試みる。また、実際の紫外線損傷である6-4光産物やシクロブタン型ピリミジン二量体を化学合成してヌクレオソーム内に配置することにより、自然な損傷に対するXPC複合体の損傷結合構造を明らかにしていきたい。
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