2020 Fiscal Year Research-status Report
タイトジャンクション形成における細胞膜脂質の機能解析
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20K22632
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重富 健太 九州大学, 理学研究院, 助教 (90878240)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / 脂質 / 人工脂質二重膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、特定の脂質分子種がタイトジャンクション構造形成のどのプロセスにおいて重要であるかを明らかにすることを目的として実施している。タイトジャンクションは上皮細胞のバリア機能を担う細胞膜構造である。タイトジャンクションを構成する主要な膜タンパク質として4回膜貫通タンパク質であるClaudinが同定された。隣接する細胞のClaudin同士が結合する事によってタイトジャンクションは形成される。また、先行研究よりタイトジャンクション領域にはコレステロールや極長鎖脂肪酸鎖を有するスフィンゴミエリンなど特定の脂質が集積しており、これらの脂質の集積もタイトジャンクションの形成に重要であることが判明している。 本年度は、タイトジャンクションの形成過程において、Claudinの集積が脂質の集積を誘導するのか、もしくは脂質の集積がClaudinの集積を誘導するのかを調べた。まず、すべてのClaudinを欠損したClaudin null細胞の樹立を行い、Claudinが欠損し、タイトジャンクションが消失していることを確認した。このClaudin null細胞において、脂質の局在がタイトジャンクションが消失していても、維持されているかどうかを検証した。脂質の局在を脂質特異的なプローブを用いて、確認したところ、claudin null細胞においても脂質の局在が維持されていることが明らかになった。この結果は、タイトジャンクションの形成機構を解明する上で重要な結果である。これ関して、現在、学術論文として投稿準備中である。 また、人工脂質二重膜を用いたタイトジャンクションの再構成に関しても、現在進行しており、Claudinの無細胞系での発現系の検討と人工脂質二重膜作成の最適化を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進行していると考える。これまでにClaudin欠損細胞の樹立を終え、Claudinと脂質との関係性を詳細に解析した。その中で、タイトジャンクションの形成における脂質の重要性を示す結果が得られており、現在学術論文としてまとめている段階である。また、人工脂質二重膜を用いたタイトジャンクションの再構成に関しても、人工脂質二重膜中への、無細胞タンパク質合成系を用いたClaudinの導入を現在進めている。人工脂質二重膜の作成に関しても、これまで所属研究室で用いていた手技に加え、別の方法での作成法を導入し、Claudinのタンパク質合成と人工脂質二重膜の形成の最適なバランスを検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、タイトジャンクションを消失したClaudin欠損細胞においても、脂質の局在が維持されていることが明らかになった。しかし、どのようにして、その脂質の局在が維持されているのか、その詳細な機構に関しては不明なままである。生体内では、タイトジャンクション以外にも特定の脂質が集積している領域が存在する。今後は、そのような領域とタイトジャンクション領域との共通性を探索することによって、脂質の局在を決定する因子の探索を行っていきたい。 また、人工脂質二重膜を用いたタイトジャンクションの再構成に関しては、まず、人工脂質二重膜の膜中にClaudinを局在化させることを目標に進めて行きたい。膜中へのClaudinの局在化に成功した後には、細胞膜構造としてのタイトジャンクションが形成されているかを電子顕微鏡を用いてその構造を確認する。その後、人工脂質二重膜の脂質の組成を変更することによって、Claudinと脂質の相互作用に関してやタイトジャンクションの形成に必要な脂質の特定を進めていきたい。そして、Claudin欠損細胞での実験と合わせて、タイトジャンクションの形成における脂質の役割を複合的に考察していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、コロナウイルス感染症の影響による、学内の閉鎖や学会参加等の旅費の支出がなかったのに加え、試薬類に関しても所属研究室の既存のものを使用したため、新規の購入がなく今年度の支出はなかった。 しかし、次年度は、これまでの研究成果を発表するための旅費に加え、タイトジャンクション消失細胞における脂質の局在維持機構を解明するために、多数の抗体を用いた細胞生物学的手法での検討や生化学的手法での検討が必要であり、本年度の予算も次年度に当てる予定である。また、人工脂質二重膜を用いた再構成系の実験系を完成させ、脂質の組成を改変させて、Claudinと脂質の関係性を明らかにするために脂質標品の購入を予定している。タイトジャンクションに局在する脂質の標品は高額であるため、その脂質の購入のために本年度の予算を次年度に当てる予定である。また、タイトジャンクション構造の形成を確認するためには、フリーズフラクチャー装置を用いてレプリカ膜を作成し、それを電子顕微鏡を用いて観察することが必要不可欠である。今後、外注にて、複数サンプルのレプリカ膜の作成を予定しており、その費用に本年度の予算を次年度予算に当てる予定である。以上の理由から、本年度予算を次年度に割り当てる必要がある。
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