2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanisms of lipid-protein interactions focusing on tension-sensing amino acids
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20K22634
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
野村 健 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (10706790)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 機械受容チャネル / メカノセンサー / タンパク質-脂質相互作用 / 大腸菌 / MscL |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌が真水などの低張液に晒られ、菌体が膨張することによる破裂死から身を守るためには、機械受容(MS: mechanosensitive)チャネルを開口させ水やイオンなどを細胞外へ放出する必要がある。しかし、MSチャネルの機械刺激に対する活性化機構の詳細については不明な点が多い。我々はこれまでに、脂質二重膜の外葉と特異的に相互作用する大腸菌MSチャネルMscLの張力感知部位(メカノセンサー)を構成する7つのアミノ酸残基を同定した。本研究では、細胞膜からの張力を最も感知していると考えられるMscLのPhe-78(F78)に着目し、これを他の19種類のアミノ酸残基に置換した突然変異体(F78X MscL)を作成し、低浸透圧ショック実験と電気生理学的手法であるパッチクランプ法を用いて、アミノ酸側鎖と脂質との相互作用、すなわちMscLの張力感知機構を解明することを最大の目的とする。 今年度は、細胞膜上にチャネルタンパク質を過剰発現させると細胞増殖パターンが異なるMscL突然変異体(F78E)を見出した。また、低浸透圧ショックを与え、その後の生存率を測定したところ、酸性や塩基性アミノ酸に置換した突然変異体やアミノ酸残基の側鎖の特性が異なる突然変異体において生存率が低下することを見出した。これらの結果は、脂質二重膜とアミノ酸残基との相互作用が変化し、チャネルの開閉動態に影響を与えていることを示唆している。また、細胞膜上でのチャネルタンパク質の発現量も細胞の生存率に深く関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は本研究に使用する実験機器の配備や物品の調達に苦慮し、実験開始にやや遅れが生じたが、当初計画していた細胞の増殖曲線や生存率の測定などの基礎データを取得することができた。現在順調に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、F78X MscL突然変異体を過剰発現させた巨大スフェロプラストを用いて、機械刺激に対する応答や単一チャネル電流の計測をパッチクランプ法を用いて検討する。また、細胞膜上のF78X MscL突然変異体の発現量の比較を行う。これらの実験により、脂質二重膜と相互作用し膜張力感知に密接に関与するアミノ酸残基の構造的または機能的役割を検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は、細胞の増殖や生存率の測定に必要な実験機器を購入し、これらの実験に予想以上の時間を要した。そのため、他の評価項目の解析に必要な試薬や消耗品の購入を見送った。これらの物品は次年度に購入し、当初計画していた実験を進める予定である。
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