2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K22635
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
角井 康貢 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (40853164)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 減数分裂 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、精子や卵といった配偶子を生み出す減数分裂におけるクロマチンの三次元構造を可視化することで、「加齢に伴う卵子劣化の分子実体は何か」という学術的問いに答えを導くことを最終目的としている。高齢での不妊は、減数分裂における相同組換えと、それにより形成される二価染色体構造(キアズマ)の異常に起因すると考えられている。そのため、これらの基盤となる減数分裂クロマチン三次元構造をDNA配列レベルという高解像度で可視化することを第一の達成目標とした。 クロマチン三次元構造の可視化には、chromosome conformation capture(Hi-C、染色体立体配座捕捉法)を用いたクロマチン間相互作用のDNAレベルでの決定が不可欠である。Hi-Cによるクロマチン相互作用解析において、サンプルの均一性は高解像度の情報を得るために重要である。そこで分裂酵母による同調的な減数分裂を利用した。現在までに、減数分裂の各段階のクロマチンサンプルを調製する実験手法を確立することに成功している。確立した実験手法を用いてクロマチンサンプルを調製し、次世代シークエンサーによりDNA同士の相互作用部位を決定することが次なる課題である。 また、加齢による卵子劣化をクロマチンレベルで理解するためのマウス実験基盤の構築も同時に行った。雌マウスから効率良く卵母細胞を回収するための過排卵処理を行う実験システムを立ち上げた。若齢マウスからは効率良く卵母細胞を回収できるようになったため、これを利用して、クロマチンサンプルの回収を行う予定である。老化による卵子劣化の分子基盤に迫るためには、若齢と老齢のマウス、それぞれ由来の卵子から染色体を単離して、クロマチン三次元構造を決定することが必須である。そのため、老齢マウスから卵母細胞を効率的に回収するための実験手法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延に伴う緊急事態宣言により、研究室への入室が制限されたことなどから、当初の予定よりも進捗が遅れている。当初の研究計画では、減数分裂クロマチンの三次元構造の可視化の条件検討のみならず、サンプル調製および次世代シークエンサーによるDNAシークエンシングによるクロマチン相互作用の決定までを行う予定であった。しかしながら、緊急事態宣言により実験時間が限定されてしまったことで、サンプル調製前の実験コンディションの決定に想定以上の時間を要してしまった。 分裂酵母の減数分裂については、同調的な減数分裂を誘導する実験システムを無事に確立することができた。この実験システムを用いて、クロマチン相互作用を決定するためのDNAサンプル調製を行っているところである。 一方、マウス卵母細胞の実験は、過排卵処理による卵母細胞の回収までを行うことができるようになった。若齢マウスからの卵母細胞を回収することはできているが、老齢マウスからの卵母細胞の回収が上手くいっていない。過排卵処理などの条件を検討することで、老齢マウスからの卵母細胞回収の実験プロトコルの確立を目指す。そして、母体の加齢に伴う卵母細胞のクロマチン構造の変化に迫りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
分裂酵母において確立した減数分裂の同調システムを利用して、Hi-Cによる減数分裂クロマチンの三次元構造の可視化を行う。同調的な減数分裂を利用することで減数分裂の進行に伴う、クロマチン構造の変化を高解像度で可視化することができる。分裂酵母の減数分裂の各段階における細胞を回収し、クロマチン相互作用を決定するためのサンプル調製を行う。さらに減数分裂においてクロマチン構造の制御に関わることが知られている遺伝子の変異体を用いて、クロマチン構造解析を行うことで、分裂酵母の減数分裂におけるクロマチン三次元構造の制御機構を解き明かす。 加齢に伴う卵子劣化の分子メカニズムに対する知見を得るために、マウス卵母細胞におけるクロマチン構造の可視化を並行して行う。若齢マウスに対する過排卵処理により、卵母細胞を回収する実験手技は確立しており、染色体クロマチンの単離について、実験プロトコルの確立を目指す。さらに高齢マウスから卵母細胞を効率的に回収するために過排卵処理について実験プロトコルの確立をする。高齢マウスはホルモンに対して反応が悪く、過排卵処理が上手く機能しないことが考えられる。このため、卵母細胞が回収できる週齢でかつクロマチン構造に異常が現れ始める週齢を実験的に明らかにすることで対処していきたい。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画とは異なり、昨年度中にHi-Cによるクロマチン相互作用の決定に用いるサンプル調製やDNAシークエンシングを行うことが出来なかった。そのため、これらに利用する予定だった試薬を購入するための予算を次年度にそのまま繰り越したことで、次年度使用額が生じた。当初の研究計画よりは遅れるが、クロマチン相互作用を決定するための実験コンディションを確立しており、本年度中にサンプル調製およびDNAシークエンシングを行うことができる。次年度使用額として繰越した金額をそのまま当初の予定通りの実験に利用する予定である。
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