2020 Fiscal Year Research-status Report
ゴーストを用いたアーキアべん毛モーター化学・力学エネルギー変換機構の解明
Project/Area Number |
20K22640
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木下 佳昭 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (30879846)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | アーキア / べん毛 / ゴースト / 化学力学共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的はアーキアべん毛の化学・力学共役を解明することである。この目的を解明するために、本研究ではアーキアゴーストを用いている。通常の生細胞観察では細胞内の化学状態を任意に設定することはできないが、界面活性剤処理による透過性の細胞膜を有するゴーストでは細胞内に摂動を与えることができる。これにより任意のATP濃度における回転運動を可視化し、その中に含まれうるタンパク質の周期構造、化学状態を反映したステップ運動を捉えうる。 初年度はアーキアゴーストの作製を行った。研究代表者は既にアーキアゴーストの作製に成功しているが (Kinosita et al., PNAS, 2020)、残念ながら同じ溶液組成では再現できなかった。pH, イオン強度等様々な条件検討を行ったが、結果として溶液の粘度を上げることで再現実験に成功した。 アーキアゴーストの作製はできたが、現在までにアーキアゴーストのステップ運動を検出できていない。理由としてビーズの負荷、溶液の粘度等による緩和時間が次の仕事が起こるまでの時間よりも長いことが考えられる。つまり、停止時間が存在したとしても観察できる対象は滑らかな回転ということになる。これを踏まえて、現在は小さな蛍光ビーズを用いて回転ステップの解析に取り組んでいる。 別の問題として、高度好塩菌のべん毛は極に生えており、ビーズの回転軌跡が斜めの楕円形となる点が挙げられる。そこで磁気ビーズを用いて、磁気ピンセットで捕捉、回転観察することにより新円の軌跡を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度はアーキアゴーストの作製に挑戦した。研究代表者は既にアーキアゴーストの作製に成功しているが (Kinosita et al., PNAS, 2020)、残念ながら同じ溶液組成では再現できなかった。pH, イオン強度等様々な条件検討に数か月を擁してしまい、本研究課題はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ビーズの負荷、溶液の粘度等による緩和時間が次の仕事が起こるまでの時間より長いことが考えられるため、小さな蛍光ビーズを用いて回転ステップの解析に取り組む。
2. 磁気ビーズを用いて、磁気ピンセットで捕捉、回転観察することにより新円の軌跡を得る。更に、捕捉によりべん毛繊維の弾性成分を固くすることが期待できる。これにより回転の緩和時間が短くなりステップ運動の追跡ができる可能性がある。来年度は磁気ピンセット並びに蛍光ビーズの同時観察によりステップ運動の検出に挑戦したい。
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Causes of Carryover |
失念によるものであり、常に使用するビオチン試薬 (消耗品)の購入を行う予定である。
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