2020 Fiscal Year Research-status Report
反応性脂肪酸代謝物によるマクロファージの恒常性維持機構の解明
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20K22641
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
磯部 洋輔 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (80724335)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質由来親電子性物質 / マクロファージ / 脂肪酸代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者らは、マクロファージに高発現する脂肪酸代謝酵素12/15-LOXによって生成する親電子性物質(lipid-derived electrophile: LDE)の標的分子の候補をプロテオミクス解析よりいくつか見出している。本年度においては、まずそれらが実際にLDEの標的となっているか検証を行った。具体的には、細胞に12/15-LOXと標的タンパク質の候補を共発現させ、LDEの基質となる脂肪酸のケミカルプローブとしてアルキン脂肪酸を加えて培養後、標的候補へのプローブの結合を可視化した。その結果、プロテオミクス解析で得られた候補のうち、これまでに検証された分子以外にも複数のタンパク質への修飾が確認され、プロテオミクス解析によるLDE修飾タンパク質の同定結果が支持された。 アルキン脂肪酸は本来の脂肪酸と構造が非常に近いものの、全く同一では無い。そこで、反応性の高いアミノ酸を捉えるケミカルプローブを用いたアプローチを用い、内因的に12/15-LOXによって産生されるLDE自身が標的に結合するか検証を行なった。その結果、見出した標的タンパク質が実際に12/15-LOX由来のLDEによって修飾されることが示された。 さらに、LDEによるタンパク質修飾の修飾部位の同定を試みた。12/15-LOXにより生成するLDEは、12/15-LOX自身にも結合してその活性を抑制することが知られている。そこで、最初の例として12/15-LOXと基質脂肪酸とを反応させたサンプルについて、ショットガンプロテオミクスにより修飾ペプチドを直接検出することを試みた結果、12/15-LOX中でLDEが結合するアミノ酸の候補を複数見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究でプロテオミクスにより見出されたLDEの標的タンパク質候補について、脂質代謝をトレースするケミカルプローブとしてアルキン脂肪酸を用い、実際に標的となっていることを検証することができた。さらに、反応性の高いアミノ酸を捉えるケミカルプローブを用いた手法によって、内因的に12/15-LOXから生成するLDEと標的タンパク質の結合も確認され、当初の仮説、及び計画通りの研究の進展となっている。 また、LDEによるタンパク質修飾部位同定についても進めており、プロテオミクス解析によって標的タンパク質におけるLDEの結合部位の候補を複数得ることにも成功しており、おおむね順調な進展であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、LDEによる修飾が確認された標的タンパク質についてその修飾部位のアミノ酸の同定を目指す。具体的には、プロテオミクスによって得られた修飾部位候補のアミノ酸を非反応性のアラニン等に置換した変異体を作成し、アルキン脂肪酸の結合が変化するかを検証するとともにタンパク質の活性に対する影響を検証する。さらに、標的の機能が細胞に発現する12/15-LOX依存的に制御されるか検証を行うと共に、LDEによる修飾の関与についても検討する。 さらに、reactivity-based probeを用いた標的同定技術を腹腔マクロファージに適用し、12/15-LOXによって生成するLDEの新たな標的の探索も行う。候補が得られたら、これまでに見出している標的分子と同様のストラテジーにてその結合の詳細なキャラクタライズを行うとともに、12/15-LOXやマクロファージ機能との関連を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度においては主に生化学的な解析で興味深い知見が得られ、研究の中心となったため、試薬代等それにかかる支出が比較的抑えられた。 次年度においては高額な支出が見込まれるケミカルプロテオミクス関連試薬等の購入を予定しているのに加え、当該年度で得られた生化学的知見を発展させるためにより多くの試薬等の購入が必要となるため、当該助成金を翌年度分として請求し、次年度分の所要額と合わせて使用することでそれらを調達する予定である。
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