2021 Fiscal Year Research-status Report
高分解能X線および中性子線回折による高電位鉄硫黄タンパク質の酸化還元反応の理解
Project/Area Number |
20K22642
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
花園 祐矢 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (00750465)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 電子伝達タンパク質 / 精密構造解析 / 中性子構造解析 / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高電位鉄硫黄タンパク質(HiPIP)の酸化型、還元型二つの状態を高分解能のX線および中性子線回折データをもとに高精度で水素原子を含めた構造解析を行うことを目的としている。 HiPIP酸化型の中性子構造解析において、アミドプロトンや側鎖の一部の水素原子について拘束なしでの座標精密化が完了した。その結果、ペプチド平面において、アミドプロトンの位置は水素結合相手である酸素原子との静電相互作用によって従来考えられているライディングモデルとは異なる位置にあることが明らかになった。また、HiPIPが持つ鉄硫黄クラスターのうち、電子貯蔵に大きく関与しているFe1、Fe2、S3、S4からなるサブクラスター1のS3原子近傍のCys75のアミドプロトンの位置が、還元型と酸化型で異なっていた。今回中性子構造解析を行なった酸化型ではCys75のアミドプロトンが、S3原子の方向には向かず、Trp74側鎖のインドール環の方向にシフトし、静電相互作用の1種であるNH-π相互作用をしていることが確認できた。一方、還元型では、高分解能X線構造解析によってCys75のアミドプロトンはS3原子の方に向いていることがわかっている。還元型では、鉄硫黄クラスターは酸化型よりも1個多く電子を持っているため、Cys75のアミドプロトンはS3原子に引き寄せられていると考えられる。この違いによって鉄硫黄クラスターの電子貯蔵能力を生み出し、HiPIPから光合成反応中心への電子伝達を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HiPIP酸化型の中性子構造解析に関しては論文として発表した。HiPIP還元型に関してはデータ測定に向けて取り組んでいるところである。量子化学計算も現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに酸化型に関しては十分なデータを取得、解析を行うことができた。還元型の中性子データを取得し、X線から得られる精密な電荷の状態と中性子から得られる正確な原子核情報を組み合わせることで、HiPIPの酸化還元反応の詳細を解明する。
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Causes of Carryover |
論文掲載が2022年度になったため。また、それに関する学会発表等を2022年度に行うため。
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