2023 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能X線および中性子線回折による高電位鉄硫黄タンパク質の酸化還元反応の理解
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20K22642
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
花園 祐矢 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (00750465)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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Keywords | 電子伝達タンパク質 / 精密構造解析 / 中性子構造解析 / X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高電位鉄イオウタンパク質(HiPIP)の構造解析を高分解能で行い、水素原子を含めた精密な構造決定を目的とするものである。今年度は、1 Å分解能を超える中性子回折データを用いて水素原子を含む構造を決定し、その座標誤差について議論できることを示した。また、電子線回折実験に向けた微小結晶の作製を行い、回折実験に適した大きさの結晶を得ることができた。 本研究で、タンパク質構造解析として初めて、水素原子の座標を精密化し、ペプチド結合の平面からの乖離について言及することができた。これまでのタンパク質の構造解析では、水素原子の座標はライディングモデルとして、座標を拘束して精密化が行われていたため、水素原子の座標についての議論は行うことができていなかった。本研究期間において、高分解能中性子構造解析を実施したことにより、アミドプロトンは、原子核がアクセプターの方へ静電的に引き寄せられることで、ペプチド平面から乖離するペプチド結合を形成することが明らかになった。さらに、鉄硫黄クラスター周辺のアミドプロトンにおいて、酸化型と還元型でわずかな構造の違いがあることを見出した。これは、鉄硫黄クラスターの硫黄原子との相互作用の違いに起因するものであり、酸化型と還元型間の電子貯蔵の違いに影響を及ぼし、HiPIPの電子伝達に強く関与していることが示唆された。 これらの成果は、タンパク質の高精度な構造解析において、水素原子を含む詳細なデータの重要性を示しており、今後の生物学的研究においても重要な知見を提供するものである。
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