2020 Fiscal Year Research-status Report
巣内で近親交配し、多女王性・多巣性を示すアリへの“共生型ウイルス”の影響
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20K22648
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小山 哲史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10549637)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 二本鎖RNAウイルス / ヤマヨツボシオオアリ / ”共生型ウイルス” |
Outline of Annual Research Achievements |
日本固有種のヤマヨツボシオオアリの細胞質には、CYVと名付けられたトチウイルス科の一種と考えられるウイルスが感染している。これまでCYVに関して、その感染率や感染経路などの基礎生態に関する研究を進めてきたところ、宿主であるヤマヨツボシオオアリに正の影響を及ぼすウイルスである可能性が生じた。このような宿主に正の影響を及ぼす共生型ウイルス”という存在は、従来の学問体系には組み込まれておらず、共生型ウイルスが宿主に与える影響の解明は、生物学における新たなテーマとなっている。そこで本研究では、CYV感染が宿主ヤマヨツボシオオアリに与える影響の解明を目指し、CYVによる宿主アリへの影響を個体レベル、および、コロニーレベルで解明する。 本研究では、CYV感染によるアリのコロニー成長速度への影響を解明するための飼育実験と、CYV感染によるアリの遺伝子発現への影響を解明するための網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。令和2年度は、ウイルスの有無と繁殖力との関連を解明するため、CYV感染・非感染コロニーを作成し、コロニーの成長速度を比較する飼育実験を開始した。具体的には、女王アリを単独で飼育し、コロニーを創設させている。現在、実験コロニーの飼育は継続中であり、月に一度のペースでワーカー数をカウントし、コロニーの成長速度を記録している。今後、コロニーが充分に成長した後、ワーカーから核酸を抽出、逆転写し、リアルタイムPCRを用いてCYVゲノムを検出することにより、コロニーのCYV感染状況を確認する予定である。それにより、CYV感染とコロニー成長速度との関連を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
ヤマヨツボシオオアリは、一つのコロニーが物理的に離れた複数の巣を有する多巣性を示す。そのため、同一個体群で採集した個体間の血縁関係は分からない。今後、網羅的遺伝子発現解析を行う際、サンプルが特定の血縁に偏ってしまう可能性を排除するため、ヤマヨツボシオオアリに対してマイクロサテライト解析を行うためのプライマーの開発を行う。その後、飼育実験で作成したコロニーからCYV感染/非感染個体を10匹ずつ採取し、念のため、リアルタイムPCRでCYV感染/非感染を確認後、illumina MiSeqを使用してmRNA-Seqを行う。それにより、CYV感染-非感染個体間で発現量が大きく異なる遺伝子を解明し、既存のデータを基に、CYV感染と発現量が関連する遺伝子が、どのような形質を支配しているかを解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、旅費の支出が減少したこと、および、予備解析が予想以上に順調に進んだことから、支出額に差が生じた。令和3年度に、当初予定していなかったマイクロサテライト解析を行う必要が生じたため、差額はこの解析のために用いる予定である。
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