2021 Fiscal Year Research-status Report
新規遺伝スイッチを用いた鳥類大脳神経回路形成機構の解明
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20K22665
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
隈元 拓馬 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (10570880)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | 脳進化 / 鳥類大脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は哺乳類と非哺乳類の大脳の発生過程の比較解析を行うことで、生物種に特異的な大脳外套構造を生み出す発生学的基盤を明らかにすることを最終的な目的とする。そのために、研究代表者が開発したゲノム挿入依存的遺伝スイッチ(iOnスイッチ)の改良と鳥類脳の時空間的イメージング法の整備を昨年度に引き続き取り組んできた。 iOnスイッチの改良に関して、当該年度では、カラーコンビネーションによるさらなる識別化を進めるため、これまで細胞質全体に発現するプラスミドを作成してきたが、今回は核に局在化する(H2Bタグ)5色のプラスミドを作成した。この核型iOnスイッチは、従来の細胞質型iOnスイッチと同時に導入することで、発現局在の違いから、より多くの異なる蛍光タンパク発現細胞を識別化することができ、多重クローン解析に重要なツールとなる。この5色の核型iOnスイッチを作成し、細胞レベル・生体レベルで予想通りの発現を示すことを確認した。 イメージングに関しては、CUBICやScale法を用いてクローン標識鳥類脳スライス及び全脳を透明化し、共焦点顕微鏡を用いて1細胞レベルで撮影することに成功した。一方で、全脳透明化したサンプルを光シート顕微鏡で撮影する方法に関しては、透明化までは順調に進んでいるが、光シート顕微鏡を未だ使いこなせていないため、今後さらなる検討が必要である。また並行して、学術支援事業にも連絡を取り、支援事業において3次元画像を取得して頂けないか交渉中である。いずれかの方法で、目的とする画像を取得したい。 大脳層マーカー遺伝子発現解析及び、タイムラプス解析については、前年度の条件検討を踏まえ、当該年度でその条件を決めることができた。 当該年度の研究計画は大きな遅れはなく研究を進められているが、細胞系譜のデータベース化及び論文化まで進めていないため、次年度にその結果を公表できるようにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度では、核型iOnスイッチである、iOn-H2B-Tq2、iOn-H2B-YFP、iOn-H2B-EGFP、iOn-H2B-mRFP1、及びiOn-H2B-IRFPの5つを新たに作成した。その後、HEK細胞を用いた発現解析から、予想通りの局在発現及び細胞質型iOnスイッチとの共導入でも、その発現局在の違いから、これまで以上の異なる導入細胞の識別を可能にしたことを確認した。 iOnプラスミド導入後のニワトリ大脳のイメージングにおいては、前年度に確立した、全脳透明化はCUBIC法、Thick sectionはScale法、というプロトコルを用いて検証を進めた結果、透明化後のThick sectionは共焦点顕微鏡を用いることで、1細胞レベルでクローン全体をイメージングすることを可能にした。一方で全脳イメージングについては、光シート顕微鏡を未だ使いこなせることができていないため、次年度への課題として残った。ニワトリ大脳神経細胞の抗体染色に関しては、前年度に決めた条件を用いて様々な発生ステージにおける染色像の取得を行なった。 当該年度の進歩により、新しい遺伝ツールの拡充が終わり、また殆どの実験条件を決めることができた。一方で、これらの技術を用いて、ニワトリ大脳の系譜解析と系譜細胞の抗体染色を予定していたレベルまで進めることはできていない
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、まず光シート顕微鏡の条件を決めることで、全脳イメージング画像を取得していく。可能な限り研究所付属の顕微鏡を使用していく予定だが、うまくいかない場合は学術支援など外部の研究サポートを活用していきたい。空間的に異なる細胞系譜解析に関しては、当該年度までに決定した条件を用いて、データ取得を進めていく。そして、次年度中に研究内容を包括し、論文として投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた旅費について、オンライン参加になったので支出がなく、その分を次年度への繰り返す。また予定していた論文投稿及びそれに関わる論文校正費に関しても、当該年度2報予定していたが1報しか間に合わず、残りは次年度以降に持ち越しとなった。研究機器及び試薬等に関しては、共通の研究機器を無償で借りることができ、想定よりも支出が少なかった。試薬に関しては、研究室の共通試薬で補填できることが多かったため、想定よりも支出を少なく抑えることができた。次年度以降は、国内・国際学会も徐々にオンサイトとなっていくので、その分の旅費・参加費に使用する。また、当該年度で抗体残量が少なくなってきているので、抗体の追加購入や、実験動物費、そして、論文校正及び掲載費として次年度使用していく。
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