2020 Fiscal Year Research-status Report
ALSにおけるミトコンドリア障害とRNAヘリカーゼの関連
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20K22682
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
引網 亮太 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任助教 (10885354)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / FUS / ミトコンドリア / RNAヘリカーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は大脳・脊髄の運動神経細胞を選択的に変性する、致死的な神経難病です。我々はALS関連遺伝子であるFUSの結合タンパクとして、ミトコンドリアタンパク質であるDHX30を同定しました。DHX30はミトコンドリアリボソームの生合成に重要とされ、ヒト神経疾患の原因遺伝子としても報告されてます。FUS遺伝子変異を伴うALS(ALS-FUS)の病態機序は依然不明ですがミトコンドリア障害の重要性を示す報告は複数あり、関連性が考慮されます。本研究では、DHX30がALS-FUSの病態機序においてどのような役割を果たしているのか、治療標的となりうるか、等について研究をすすめています。 ヒト培養細胞を用いた検証で、野生型および変異型FUSが、DHX30とRNA依存性に結合していることを確認しました。また野生型FUSとは異なり変異型FUSを発現した細胞では、ミトコンドリア内のDHX30に構造障害がおきていることを示しました。さらに変異型FUS発現細胞では、野生型FUS発現細胞と比較して、ミトコンドリアタンパクの発現量が低下し、さらに呼吸鎖複合体の形成障害を認めました。呼吸鎖複合体は細胞のエネルギー産生に極めて重要で、特に長い軸索を有する運動神経細胞では多くのエネルギーを必要とします。これらの結果からは、変異型FUSがDHX30の構造障害および機能障害を引き起こすことにより、ミトコンドリアにおけるエネルギー産生が低下し、神経細胞毒性を来している可能性が示唆されました。 今後は、ALS-FUSの病態機序におけるDHX30の重要性、またDHX30が治療標的となりうるかについて、さらに研究をすすめてまいります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、変異型FUS発現に伴いDHX30の異所性局在がおきている、と考えていましたが、様々な検証により、異所性局在ではなくDHX30の構造障害がおきている事がわかりました。変異型FUSとの結合を介してDHX30の構造障害を来し、ミトコンドリアタンパク質の発現低下、呼吸鎖複合体の形成障害がおきている事をしめしました。 遅れている点として、ミトコンドリアタンパクの翻訳効率を当初はビオチンを用いた反応系で検証していましたが、実験系がうまく働きませんでした。現在は放射性同位元素を用いた方法を試しています。 また残念ながら低分子によるFUSとDHX30の結合阻害は、選出した低分子の毒性の影響か、FUS毒性をレスキューできませんでした。
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Strategy for Future Research Activity |
DHX30のノックダウンがミトコンドリアタンパク質の翻訳障害を来すことは既に報告されています。変異型FUS発現に伴い同様の翻訳障害がおきているか、放射性同位元素を使用した系を確立し、検証します。また転写障害ではない事をqPCRを用いて確認します。 治療法の探索として、DHX30の発現上昇がFUS変異体による毒性を改善するか、マウス初代神経細胞にAAVを用いてFLAG-GUS P525LとDHX30-Mycを発現させ、検証をすすめています。 またDHX30の構造障害が、他ALS原因遺伝子であるTDP-43やSOD1等でもおきるのか、培養細胞を用いて検証をすすめています。
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