2020 Fiscal Year Research-status Report
Cellular dynamics of the hippocampus and anterior cingulate cortex in consolidation of spatial memory
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20K22686
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
棒田 亜耶花 京都大学, 医学研究科, 教務補佐員 (10884645)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | カルシウムイメージング / 海馬 / 前帯状皮質 / 記憶固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬には動物が特定の場所を訪れた際に発火する「場所細胞」があり、 場所記憶を担っていると考えられているが、海馬で形成された記憶は睡眠中や休息中に大脳皮質へ移行し長期的な記憶になるとも考えられている。申請者は前帯状皮質で海馬で見られるものと似た場所細胞と、場所細胞より広く空間全体を表象する細胞「空間文脈細胞」を発見し、この細胞が 海馬-皮質間の記憶固定化プロセスにより形成されたと考えた。これを証明するためにまずは学習中、休息中の海馬を抑制し、前帯状皮質で空間文脈細胞の形成にどのような影響があるかを調べた。学習中の海馬の抑制群では前帯状皮質での場所細胞、空間文脈細胞、両方の阻害が見られた。一方、休息中の海馬を抑制した群では前帯状皮質で場所細胞は形成されたが、空間文脈細胞の形成は阻害された。この結果から前帯状皮質場所細胞は学習中の海馬のインプットで即時に形成されるが、空間文脈細胞は学習中、休息中の両方で海馬のからのインプットにより形成されることが明らかになった。この結果は特に空間文脈細胞が海馬で形成された記憶は睡眠中や休息中に大脳皮質へ移行し長期的な記憶になるという従来の記憶固定化のモデルと一致する細胞であることを示している。さらに、これらの細胞が空間と文脈の長期的な記憶に伴い、増加していることを確認するため、電気ショックによって空間に対する恐怖記憶を形成し、9日後に前帯状皮質の神経活動記録した。この結果、前帯状皮質での空間文脈細胞の増加が見られたため、この細胞は長期的な空間と文脈の記憶を担っている新規の細胞と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は休眠中に形成される海馬-皮質間のLTPによって前帯状皮質の空間文脈細胞へ空間記憶が移行していることを証明する。この研究により今まで明らかでなかった海馬-皮質間の記憶固定化のモデルを細胞レベルで提示することが目的であるが、事前に空間文脈細胞が長期的な記憶と関与して形成されているか、また休息中の海馬を抑制し空間文脈細胞への影響を確認することで、空間文脈細胞が記憶固定化のモデルと一貫しているかを確認した。 inhibitory avoidance testで電気ショックによる空間文脈的な記憶を形成し、その9日後に前帯状皮質で空間文脈細胞が増加していることが観察された。さらに空間タスク後の休息中に海馬の活動を抑制させることで空間文脈細胞の形成にどのような影響が見られるかを観察したところ、空間文脈細胞の形成が阻害されていることが確認された。さらに前帯状皮質は空間タスク中に海馬場所細胞に類似した場所細胞も観察されるが、休息中に 海馬の活動を抑制した群でも場所細胞は問題なく形成されていたことから、場所細胞ではなく空間文脈細胞が特に記憶固定化による長期記憶の形成を担っていることが示唆された。 これらの結果により、前帯状皮質の空間文脈細胞は、前帯状皮質の空間文脈細胞へ空間記憶が移行しているという記憶固定化のモデルを細胞レベルで提示することができた。 これらの進展は研究目的に沿っており、おおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗では前帯状皮質で発見された空間文脈細胞は長期的な空間と文脈の長期的な記憶を担う細胞で、学習中に海馬で形成された記憶が休息中に皮質へ移行し形成されるものと考えられた。今後の推進方策としては記憶固定化のプロセスに重要と考えられている海馬メモリーリプレイと空間文脈細胞の形成の関係について検証する必要がある。LTPに伴いアクチンが重合しシナプスが拡大することが知られており、このとき重要なタンパク質がコフィリンである。そこで光増感法(CALI)を用い、光照射によりコフィリンを不活化し海馬-皮質間のLTPを解除する。まず、光増感蛋白質であるSuperNova (SN)とコフィリンの融合タンパク質を海馬に発現し、光照射によりコフィリンを不活化することでLTPを解除する。睡眠中のメモリーリプレイ発生時に観察される脳波であるSharp wave/rippleをトリガーとした光刺激を行うことで睡眠時のメモリーリプレイ中の海馬のLTPを解除する。その後、前帯状皮質の空間文脈細胞の形成について検討する。また、転写因子CREBはLTPを増強することが知られているため光感受性蛋白質であるLOV domainを用い、光活性化CREB (PA-CREB)を構築し、Sharp wave/rippleをトリガーとした光刺激を行うことでLTPを強化する。この場合も前帯状皮質の空間文脈細胞の形成が強化されているかについて検討する。このメモリーリプレイ中の操作により空間文脈細胞への影響が見られない場合は、興奮性DREADD(hM3D(Gq))を海馬に発現させメモリーリプレイだけでなく休眠中全体の海馬の活動を薬理学的に活性化させ、空間文脈細胞への影響を観察することで休眠中の海馬の活性化による実験の有効性を検証する。
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Causes of Carryover |
研究室異動の可能性があるため当初の計画にあった新規の実験補助員の雇用や設備の導入を遅らせ、次年度へ回すこととした。また、新型コロナウィルスの蔓延により学会発表の旅費も次年度のオンライン学会発表等へ回すこととした。
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Research Products
(1 results)