2020 Fiscal Year Research-status Report
脳内クレアチン代謝を標的とした多発性硬化症に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K22690
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山崎 礼二 自治医科大学, 医学部, 助教 (00870718)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | ミエリン / 再ミエリン化 / クレアチン / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の髄鞘(ミエリン)が障害される代表的な神経疾患として多発性硬化症があげられる。多発性硬化症は再発と寛解を繰り返すことで次第に進行型へと移行し、最終的には自身で歩行することも困難となる。しかしながら、再ミエリン化を促進する治療法は未だに確立されておらず、新たな視点に基づく治療法開発が必要である。 本研究は脳内でのクレアチン代謝を標的とした多発性硬化症の新たな治療法開発を目指し、クレアチンによる組織再生および運動機能回復効果を詳細に評価し、ミエリン再生および細胞保護効果における作用機構を明らかにすることを目的とする。 まず初めに銅のキレート剤であるクプリゾンを含有した飼料を摂取させることで脱髄モデルマウスを作製した。次に、クプリゾンにクレアチンを加えた特殊飼料を摂取させたマウスとの脱髄部位を比較した。脱髄がピークとなるクプリゾン投与5週後に脳梁部の解析を行ったところ、クレアチンを含有した特殊飼料を投与した群において成熟オリゴデンドロサイトの数が優位に多いことが明らかになった。また、主要なミエリンタンパク質であるMBPが増加していること、炎症により応答する活性化ミクログリアが減少していることが示唆された。これらの結果から、クレアチンにオリゴデンドロサイトの保護・再ミエリン化促進作用がある可能性が示唆された。さらに、研究代表者が開発した内包脱随モデルマウスを用いた薬剤評価系により脱髄および再生に伴う運動機能の評価も可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クレアチンの細胞保護・再ミエリン化促進効果を調べるために、特殊飼料を作製して解析した結果、脱髄部位において優位に成熟オリゴデンドロサイトが多いことが示された。また、すでに電子顕微鏡観察のためのサンプリングも完了しており、これから解析する予定である。さらに、脱髄と再生に伴う運動機能を評価するために研究代表者が開発した内包脱随モデルマウスによる薬剤評価系を確立することができた。一方で、現在脱髄部位に多くみられる成熟オリゴデンドロサイトがクレアチンの細胞保護効果により生存した細胞なのか、または脱髄後に分化が促進されて再生した細胞かどうかは不明である。そのため、今後はこの点を明らかにすること、また内包脱随モデルマウスを用いて運動機能との関係を明らかにすることが課題とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
脱髄部位に多くみられる成熟オリゴデンドロサイトがクレアチンの細胞保護効果により生存した細胞なのか、または脱髄後に分化が促進されて再生した細胞かどうかを明らかにするために、細胞死や細胞増殖のマーカー、BrdUを用いて解析する。また、電子顕微鏡による解析を完了させる。さらに、内包脱随モデルマウスにクレアチンを投与し、脱髄と再生に伴う運動機能の変化についても解析を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響で研究が遅延したため 2021年度は脱随モデルマウスの運動機能評価や電子顕微鏡による解析を行う。また、マウスの脱髄病変部位からRNAを抽出し、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析を行う予定である。マイクロアレイによる解析は外部委託するため高額となることが予想される。
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