2021 Fiscal Year Research-status Report
脳内クレアチン代謝を標的とした多発性硬化症に対する新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K22690
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山崎 礼二 自治医科大学, 医学部, 助教 (00870718)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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Keywords | ミエリン / 脱髄 / クレアチン / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の髄鞘(ミエリン)が障害される代表的な神経疾患として多発性硬化症があげられるが、多発性硬化症は再発と寛解を繰り返すことで次第に進行型へと移行し、最終的には自身で歩行することも困難となる。しかしながら、再ミエリン化を促進する治療法は未だに確立されておらず、新たな視点に基づく治療開発が必要である。 本研究は多発性硬化症の新規治療候補化合物として、細胞保護機能を持つアミノ酸であるクレアチンを見出し、クレアチンの脱髄保護効果および脱髄に伴う運動機能障害抑制効果を詳細に評価し、その作用機構を明らかにすることを目的とする。 まず、生後8週齢のC57BL/6マウスに0.2%クプリゾン含有飼料(CPZ)または0.2%クプリゾン/2%クレアチン含有飼料(CPZ/CR)を5週間経口摂取させ、脱髄モデルマウスを作製した。これらのマウスの脳梁部を解析したところ、クレアチン摂取により、成熟オリゴデンドロサイトの数が優位に増加していることが明らかになった。また、脱髄の程度を詳細に比較するために、電子顕微鏡による解析をしたところ、クレアチンに脱髄予防効果があることが示された。 次に、クレアチンの摂取により、脱髄に伴う運動機能障害が軽減されるかを調べるために、成熟マウスにクレアチン欠損飼料(CR-Def)または2%クレアチン含有飼料(CR)を4週間摂取させ、クレアチン欠乏マウスとクレアチンを十分に摂取したマウスを作製した。これらのマウスの内包に脱髄誘導剤であるリゾレシチンを注入することで内包脱髄モデルを作製し、急性脱髄に伴う運動機能の変化を調べたところ、クレアチンの長期摂取により急性の運動機能障害が軽減されることを見出した。さらに、脱髄部位からRNAを抽出し、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析を行ったところ、クレアチン摂取により多くの遺伝子群が変動することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの解析からクレアチンに脱髄予防効果が示された。また、研究代表者が開発した内包脱髄モデルマウスを用いて、クレアチンの前投与により急性脱髄に伴う運動機能障害の抑制効果が示された。 しかしながら、現在クレアチンの脱髄予防効果における作用機序は不明である。今後は網羅的な遺伝子解析結果から、クレアチンの摂取がどの細胞にどの様に作用しているかを調べ、クレアチン摂取による脱髄予防効果のメカニズムを明らかにすることが課題とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイによる網羅的な遺伝子解析結果から、クレアチン摂取により変動する遺伝子を免疫組織化学や生化学的な解析によって、詳細に解析する予定である。これらの解析から、中枢ミエリンの形成細胞であるオリゴデンドロサイト特異的な遺伝子やクレアチン摂取により活性化するシグナル経路を同定し、クレアチン摂取に伴う脱髄抑制機構を明らかにすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
本年度はクレアチンの効果を検証する解析が中心であったが、次年度には詳細な作用機序解析を予定している。これまでに網羅的な遺伝子解析を行い、クレアチン摂取により変動する遺伝子を現在解析中であるため、次年度の予算が必要である。また、これから論文投稿を予定しており、論文の掲載費用も必要となるため調整を行なった。
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[Presentation] 単眼の視覚欠如と両眼の視覚欠如が髄鞘形成に与える影響の解析2021
Author(s)
長内 康幸, バッツルガ バツプレブ, 山崎 礼二, 山本 真理子, 幸喜 富, 矢田部 恵, 水上 浩明, 上野 将紀, 小林 憲太, 吉村 由美子, 篠原 良章, 大野 伸彦
Organizer
第 64 回日本神経化学会大会
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