2020 Fiscal Year Research-status Report
網膜内層神経障害の分子メカニズムの解明と新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K22692
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
國見 洋光 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (40877073)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 低酸素応答因子 / 網膜神経保護 / 網膜虚血再灌流 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、網膜内層における神経細胞障害の分子メカニズムにおいて低酸素応答因子(HIF)が関与している可能性について、これまで報告してきた。その結果を基に、HIF-1aの網膜特異的ノックアウト(KO)マウスの作製を行ってきた。これまで申請者が確立した網膜虚血再灌流モデルを用いて網膜局所のHIF-1a発現増加をきたす実験系を利用してきたが、このHIf-1aコンディショナルノックアウトマウスでは、虚血再灌流下であっても網膜のHIF-1a発現をほぼ認めないものであった。このKOマウスは、コントロールと比較して有意に網膜神経細胞、特に網膜内層の神経保護作用を認めることを、組織学的にも実証した。この結果から、網膜内層の神経障害にHIF-1aの発現が関与していることをさらに強く示唆することとなった。 HIFにはその下流に100ほどの遺伝子があることがわかっており、その中でも本研究の網膜内層神経障害において、特にどの遺伝子が関与しているのかを調べることで、その分子メカニズムを詳細に知ることができる。網膜内層特異的に検証するため、マウス網膜の内層細胞のみを抽出する方法として、レーザーマイクロダイセクション(LCM)法がある。専用の顕微鏡を使用し、マウス網膜切片より内層のみを取り出してくる方法として、その手技を確立した。この手法では一度で採取できる細胞数が少なく、実験データとして有意な量を確保するために時間を要したが、qPCRアレイを用いてコントロールと比べて網膜虚血再灌流を行ったマウスの網膜内層で有意に発現増加・減少している候補遺伝子の絞り込みを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、前述のqPCRアレイによるHIF下流の遺伝子の中から、網膜神経細胞障害に関与すると思われる候補遺伝子の絞り込みが完了した。昨年度の中で、Hifの網膜特異的ノックアウトマウスの確立とそれを用いた検証が終了し、さらにレーザーマイクロダイセクション法の確立とPCRアレイまで終了できたことは、本研究の大きな進展であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では網膜内層の神経障害におけるHIFの下流の分子メカニズムを解明することが目的である。前述のqPCRアレイの結果から、数個の原因遺伝子の絞り込みに成功した。今後は、その中から、網膜神経障害に関与している可能性が高いと想定される遺伝子の発現をまずは細胞実験で検証する。細胞におけるノックアウト実験で実証することができればマウス実験へと移行する。 その遺伝子のみをマウス網膜内層で発現抑制するための手法として、アデノ随伴ウイルス(AAV)硝子体内注射によるCRISPRシステムを用いる予定である。申請者らはすでにAAV硝子体内注射の手法と感染効率の検討を報告しており、円滑にその実験を開始できると考える。この特定遺伝子の発現抑制下で、網膜虚血再灌流を行ったマウス網膜の神経保護作用が認められれば、HIF下流のパスウェイを特定できると考える。
|