2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K22693
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
上野 真一 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (40875944)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | パーキンソン病 / α-シヌクレイン / 全身臓器 / 伝播凝集 / パラビオーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
パーキンソン病(PD)は、構造異常を伴うα-シヌクレイン(AS)が、神経を伝播・凝集することで神経細胞の変性が生じ、そして病態の進行とさらに変性過程を惹起することが想定されている。この「伝播現象」が疾患の変性プロセスや病勢の進展に深く関与していることが推定されている。これまで、ASの凝集体は、嗅上皮や腸管から神経回路を介して脳全体へ上行、進展するというBraak仮説が提唱されているが、臨床的、病理学的観点からも全ての症例には当てはまらない。そこで、代表者は非神経系回路を介した伝播経路以外に血液を介してAS凝集体が循環し全身に広がる可能性を考え、血液中に微量なAS凝集体を検出することに成功した。この血中AS凝集体の存在は、Braak仮説も含めて、その仮説では説明できない病態を明確に出来る手がかりになると考え、本研究で実験を遂行した。まず全身に拡がるAS凝集体の範囲や程度を評価するために、PD剖検症例と、対照症例の検体の各臓器のホモジネートを作成した。次に、患者由来のASが全身での動態的な挙動を確認するため、AS伝播モデルの作成を行った。そしてPD患者血液由来ASシードを脳内に投与したマウスと、腹腔内へ持続投与を行ったマウスのいずれも飼育を継続した。リコンビナントAS吸着実験では、リコンビナントASでの吸着実験を行い今後測定法を検討する。そしてパラビオーシスは手技として安定し生存率の上昇が得られ、今後ASシードの投与を行い、全身への伝播・凝集を確認する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、まずPD剖検症例と対照症例の検体の各臓器のホモジネートを作成した。既報告である通り、全身の臓器にAS凝集体が蓄積していることが想定され、脳をはじめ肝臓や腎臓など組織の破砕を行った。各ホモジネートは蛋白濃度を調整し、今後Real-time quaking-induced conversion(RT-QuIC)法を用いた解析や、ウェスタンブロッティングなど生化学的解析や、組織切片を取得し免疫組織学的な評価も併せて行う。次に、AS伝播モデルについては、PD患者血液由来ASシードをリコンビナントASと振盪しAS凝集体を作成した。そのAS凝集体を超音波処理で断片化し、ASシードを作成した。そのASシードをQ-dotプローブを用いてラベリングし、投与器を用いて脳内へ投与する群と、浸透圧ポンプを用いて腹腔内へ留置し持続投与を行った群のいずれも飼育を継続した。AS吸着実験では、まずリコンビナントASを振盪させAS凝集体を作成し、超音波処理で断片化した。そのASシードを血漿交換カラムを混和させ、溶液内のASシードをウェスタンブロッティングを用いて吸着の程度を定量化することを試みたが、検出が困難であった。今後はEnzyme linked immunosorbent assay(ELISA)などを用いて微量なASシードを測定する。そしてパラビオーシスは手技として安定し生存率の上昇が得られ、今後ASシードの投与を行い、全身への伝播・凝集を確認する。
|
Strategy for Future Research Activity |
全身臓器の解析については、PDや正常対照例の剖検検体のサンプル作成は概ね順調に進行している。それらの生化学的解析や免疫組織学的解析を行うことで、全身のどの臓器により蓄積しているか、またどの臓器に蓄積していないのか分布や程度を測定する。その結果を受けて、ASの伝播・凝集と臓器間の関連を見出す。生化学的解析では、微量なASはウェスタンブロッティングのみでは検出できない可能性があり、より高感度なELISA法やRT-QuIC法を用いることで、検出感度効率をあげる。組織学的には、臓器内でどの部位にどの程度蓄積しているか観察する。AS伝播モデルでも同様に、臓器毎に生化学的解析と免疫組織学的解析を行う。ASシードは量子ドットを用いてラベリングしており、蛍光免疫染色での検出の際に容易であることや、さらにin vivoイメージングシステムを用いて検出することも試みる。In vivoイメージングで可視化することができれば、より伝播・凝集を詳細に観察することが可能となる。AS吸着実験については、まずリコンビナントAS由来のASシードが、血漿交換カラムと吸着するかどうか確認する。その上で、PD患者由来ASシードの吸着の検討を行う。並行してマウスのパラビオーシスを行った群に対しては順次、脳内、腹腔内へASシードを投与する。その後、投与同側、対側それぞれのマウスで、生化学的解析と免疫組織学的解析を行い、ASシードが生体膜を通じて伝播するかどうかを確認する。
|
Causes of Carryover |
初年度の予算使用開始時期が、2020年9月中旬からであり、またCOVID-19感染の蔓延に伴い、実験業務の中断など当初の計画より初年度に行う実験の時期がずれ込んでしまったため次年度使用額が発生した。しかしながら、剖検検体を用いた全身臓器のサンプル作成や、マウスモデルの作成、カラムを用いた吸着実験などいずれも、一定の知見は得られており、実験は順調に進行している。今後の使用計画としては、計画通り、作成したサンプルや現在飼育中のマウスモデルの解析を進め、計画を遂行できるよう最大限推し進める。
|