2020 Fiscal Year Research-status Report
ヌクレオシド天然物の生合成におけるヘテロ原子導入機構の解明
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20K22700
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牛丸 理一郎 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (10873648)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 生合成 / ヌクレオシド天然物 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌 Streptomyces calvus T-3018 が生産する nucleocidin は 4-フルオロリボースを基本骨格とし、また一級スルファメート部位を側鎖として持つ極めてユニークなヌクレオシド天然物である。Nucleocidin はフッ素原子を含む数少ない天然物の一つであるが、その生合成経路の詳細は未だ明らかになっていない。本研究では、nucleocidin の生合成経路における、リボース骨格へのフッ素原子の導入および、スルファメート部位の形成を含む生合成経路の解明を目的とし、遺伝子破壊実験と in vitro 酵素反応解析を計画した。これまで nucleocidin の生合成を担うと考えられる9つの酵素全てを可溶性タンパク質として大腸菌または放線菌から異種発現、精製した。化学合成した基質を用いたグリコシル基転移酵素のin vitro反応解析の結果からヌクレオシド骨格のグリコシル化が生合成序盤で起こることが示唆された。また、生合成遺伝子クラスターがコードするラジカルSアデノシルメチオニン酵素を嫌気性条件下で精製することにより、可溶性タンパク質として得た。タンパク質への鉄硫黄クラスターの結合を紫外可視吸光度測定によって確認した。さらに、フッ素化体生成物の検出には至っていないものの、ヌクレオチド基質とラジカルSアデノシルメチオニン酵素のin vitro 反応を行ったところ、基質の酸化体が得られた。今後も引き続き、精製したタンパク質の in vitro 解析を行い nucleocidin の生合成系を解明を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度はnucleocidin生合成経路解明の準備段階として予想中間体の化学合成と生合成遺伝子のクローニングと異種発現、精製を完了した。生合成の鍵となるフッ素原子の導入やスルファメート部位の構築を担う酵素の同定には至っていないが、鍵酵素であるラジカルSアデノシルメチオニンタンパク質の酸化反応活性を見出した。しかしながら Streptomyces calvus T-3018 によるnucleocidinの生産が確認できなかったため、予定していた遺伝子破壊実験に遅れが生じている。そのため本研究はやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに精製を完了したタンパク質のin vitro反応解析を引き続き実施する。それと並行して、複数の生合成遺伝子を放線菌宿主中で異種発現し、代謝物のプロファイルを解析することで、遺伝子の機能同定を試みる。また、nucleocidin生合成遺伝子クラスターと相同生を示す遺伝子クラスターを有する放線菌の代謝物を解析し、ヌクレオシド天然物の生合成機構の解明を行う。
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Research Products
(5 results)