2020 Fiscal Year Research-status Report
末梢血流/末梢温調節機構に着目したオキサリプラチン誘発末梢神経障害の解明
Project/Area Number |
20K22706
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荻原 孝史 京都大学, 薬学研究科, 特定助教 (00883612)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | オキサリプラチン / 末梢神経障害 / 末梢血流障害 / 末梢温調節機構 / 血管拡張薬 / 疼痛モデル / 感覚異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金系抗がん剤であるオキサリプラチン(L-OHP)は副作用として高頻度に末梢神経障害(chemotherapy induced peripheral neuropathy : CIPN)を発現する。このCIPNは有効性の高い予防/治療法がなくアンメットニーズは高い。これまで、主にCIPN動物モデルを用いて末梢の血流障害が末梢神経障害の進行に寄与することを明らかとしてきた。L-OHPによる本研究では、L-OHPによる末梢血流障害の発生機序や、末梢神経と末梢血管との機能的相互連関という観点からCIPNの発症機序を明らかにすることを目的としている。 L-OHP反復投与によるCIPNモデルにおいて、投与開始4~6週間後に末梢血流量/末梢温低下が引き起こされた。さらに、L-OHP投与8週後において、マウス後肢への冷負荷後の末梢温低下からの回復が遅れており、L-OHPによる末梢温調節機構の異常が認められた。この末梢末梢神経障害時の末梢温調節機構破綻と異常感覚との関連をより詳細に検討するためNav1.8発現神経特異的にGCaMP6fを発現するTGラットを用いた感覚神経活動のin vivoイメージングの確立を目指したが、現在のところ良好な結果は得られていない。 一方、この末梢神経障害モデルでは投与初期から持続的な機械過敏応答や冷過敏応答が誘発されるだけでなく、投与6~8週後から熱感覚障害や触覚障害が認められる。これらの異常感覚に対して、神経障害性疼痛治療薬としてCIPN患者にも用いられるプレガバリンおよびデュロキセチンの効果を検討したところ、誘発痛である機械過敏応答や冷過敏応答は有意に抑制されたが、熱感覚障害や触覚障害に対しては効果を示さず、臨床と一致する結果となった。こちらのモデルでは疼痛だけでなく感覚障害も誘導され、CIPNを評価するモデルとして適していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物モデルを用いた後肢への冷負荷後の末梢温低下からの回復を評価する実験系の確立に難渋し、当初の予定よりはやや実験の進行が遅れている。また新型コロナウイルス感染拡大により研究施設への立ち入り制限により、実験を中断せざるを得なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の一部に遅延が生じているものの、初年度の研究目標はある程度達成できている。Nav1.8発現神経特異的にGCaMP6fを発現するTGラットを用いた感覚神経活動のin vivoイメージングの確立は難航しているが、CIPNモデルにおいて、末梢温度や血流の変化が見られた際の血液や神経組織を回収し、ROSやサブスタンスP、CGRPなどの末梢血流/末梢温調節因子の遊離量や発現量をreal-time PCRやELISAにより測定することにより、末梢末梢神経障害時の末梢温調節機構破綻と異常感覚との関連を検討していく。 また、京都大学医学部附属病院の電子カルテを用い、L-OHPとPDE阻害薬などの血流改善効果を示す薬剤を併用しているがん患者を抽出し、CIPNの発症率や重症度、抗がん剤の継続率などを後向きに調査する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、予定していた実験系の確立が遅れ、その後の実験への着手ができなかったため。また新型コロナウイルス感染拡大による実験施設への立ち入り制限があり、思うように研究を進めることができなかったことも理由の一つとして挙げられる。 使用計画としては、オキサリプラチン投与による末梢神経障害モデル動物作製および試薬や消耗品に使用する。
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