2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞性粘菌分化誘導因子DIF-1の哺乳細胞におけるターゲット分子の同定
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20K22709
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
哲翁 ふみ 九州大学, 医学研究院, 助教 (80875899)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | DIF-1 / 乳がん細胞 / AMPK |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、S6Kを調節するAMPKシグナルに着目し、DIF-1のターゲット分子を同定することを目的としている。
ヒト乳がん細胞株MCF-7細胞とマウストリプルネガティブ乳がん細胞株4T1-Luc細胞を用いた実験で、DIF-1はAMPKの基質でありタンパク質合成に関与するmTORの結合タンパク質であるRaptorのリン酸化を促進すること、そしてAMPKを活性化させることがわかった。DIF-1によるS6Kタンパク質発現の減少が、AMPKを介しているかどうかを、AMPK阻害剤(Compound C, AMPK siRNA)を用いて検討したところ、DIF-1の効果が減弱したため、DIF-1はAMPKを介してS6Kタンパク質発現を調節していることが示唆された。
DIF-1の作用である①細胞増殖抑制、②細胞遊走・浸潤抑制において、AMPK/mTORが共通して関与している可能性が明らかとなった。①DIF-1はmTORの基質であるS6Kを抑制することで、STAT3蛋白質合成阻害した結果、cyclin D1を減少させ乳がん細胞の増殖を抑制する。②DIF-1はmTOR/S6K抑制を介してがん遠隔転移に重要なSnailの蛋白質発現を減少させることで、乳がん細胞の遊走・浸潤を阻害する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はDIF-1の作用がAMPKの活性を介してS6Kのタンパク質発現を減弱させ、抗腫瘍効果をもたらす可能性を示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
AMPKの上流キナーゼに、がん抑制因子であるliver kinase B1 (LKB1)、細胞内カルシウム濃度のセンサーであるcalcium/calmodulin-dependent protein kinase kinase 2 (CaMKK2)がある。これらは、AMPKをリン酸化し活性を制御する。 DIF-1がAMPKの上流キナーゼへもたらす影響について検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で予定していた学会に出張できなかったため。 Raptorの上流を探索する過程で、上流キナーゼのタンパク質発現検出や評価に時間がかかってしまったため。 次年度は上流キナーゼへの影響、DIF-1のターゲット探索をさらに深め、未使用額は学会発表(第80回日本癌学会学術総会、ESMO Congress 2021、第74回西南部会、第95回薬理学会年会)、論文作成の経費に充てることとしたい。
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