2020 Fiscal Year Research-status Report
臨床O-グライコペプチドミクスによる大腸がん治療標的候補分子の探索的研究
Project/Area Number |
20K22712
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高倉 大輔 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任教員 (90760231)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | グライコプロテオミクス / LC/MS / O-型糖鎖 / がん / 創薬標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞では糖鎖の特異的付加や構造変化(不均一性変化)が生じており,この現象は,細胞極性の喪失をはじめ,がんの発生に直接関与すると指摘されている.糖鎖にはN-型とO-型がある.これまで,微量組織検体上のO-型糖鎖の解析は極めて困難であり,がん特異的O-型糖鎖の探索は容易ではなかった.本研究では、自身が開発したLC/MS/MSとアセトン沈殿法を用いたN-糖ペプチド解析法を改良することで、大腸がん組織検体における “O-型糖ペプチド抗原”を同定し、抗悪性腫瘍治療薬としての抗体薬品の標的分子候補や病理診断マーカー候補を提供することを目指す。 本年度は、まず、大腸がん凍結組織検体“がん部-非がん部間”における糖鎖プロファイルの違いをレクチンマイクロアレイにより明らかにした。その結果、N-型糖鎖高マンノース構造を認識するレクチンに加え、O-型糖鎖認識レクチンのシグナル強度ががん部で増加していることが明らかとなった。続いて、このO-型糖鎖認識レクチンに反応する糖タンパク質を捕集した後、LC/MSで網羅的に同定した(レクチンープロテオミクス)。その結果、がん部・非がん部合わせて、患者A:3063、患者B:3380、患者C:2824、患者D:2916、患者E:3067、患者F:1059ものタンパク質をそれぞれ同定した。さらに、これらのタンパク質の内、がん部における発現優位性をピーク強度から算出し、シグナル配列部位/膜貫通領域の有無をインフォマティクスの手法により推定した。 本年度では、さらに、O-グライコプロテオミクスによりO-型糖ペプチドを網羅的に同定した。O-型糖鎖認識レクチン捕集タンパク質のトリプシン/リシルエンドペプチダーゼ消化物からO-型糖ペプチドの濃縮し、LC/MS/MSによりO-型糖ペプチドを網羅的に同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施項目①プローブレクチンの同定:研究代表者が抽出した大腸がん凍結組織検体(n=6)由来タンパク質の糖鎖プロファイル比較解析は、慶應義塾大学医学部集中研レクチンアレイチームが担当した。大腸がん組織―非がん検体間の糖鎖プロファイルの違いが明らかとなり、数種類のプローブレクチンを同定することができた。 実施項目②レクチン結合タンパク質の大規模同定:研究代表者が担当した。実施項目①で同定したプローブレクチンよりO-型糖鎖認識レクチンを選抜し、タンパク質を捕集後、LC/MSにより網羅的に同定することができた。 実施項目③O-型糖ペプチドの大規模同定:研究代表者が担当した。実施項目②で調製したレクチン捕集タンパク質のペプチド消化物よりO-型糖ペプチドを濃縮し、LC/MSにより網羅的に同定することができた。 本年度に計画されていた実施項目①~③について予定通り完了しており、研究は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をもとに、公的データベース等を用いながら創薬候補分子の絞り込み、選出をおこなう。詳細なグリコフォーム解析も含め、分化度の異なる大腸がん株を用いた免疫組織染色を実施し、創薬標的としての妥当性を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、購入予定であった海外からの取り寄せ試薬・消耗品の欠品・遅延が重なった。また、参加予定であった学会・セミナー等が全てオンライン開催となったため、旅費の計上が抑えられた。次年度も引き続き学会・セミナー等はオンライン開催が見込まれるため、経費は試薬・消耗品を中心に使用する予定である。
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