2020 Fiscal Year Research-status Report
炎症性の難病を制御するプロスタグランジン輸送体の細胞内局在制御機構の解明
Project/Area Number |
20K22719
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
中村 吉伸 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (60880317)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | プロスタグランジン / SLCO2A1 / 細胞内局在 / N型糖鎖修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥厚性皮膚骨膜症および非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子であるSLCO2A1は、プロスタグランジン(PG) E2の細胞内外濃度を調節する膜輸送体である。一般的にSLCO2A1は細胞膜に発現し、細胞外PGE2の取込み、およびその作用減弱に働くと考えられてきたが、近年我々はSLCO2A1が細胞内小胞に発現する場合は細胞外へのPGE2の開口分泌に関わり、作用増強に働くことを見出した。すなわち、SLCO2A1の細胞内の局在の違いによって、PGE2の作用を増強と減弱の相反する方向に調節することがわかってきたが、本輸送体の細胞内局在メカニズムについては不明である。そこで本研究では、SLCO2A1の細胞内局在を制御する因子の同定を目的とした。翻訳後修飾の一つであり、膜輸送体の細胞内局在に関与する報告のあるN型糖鎖修飾に着目し、SLCO2A1のN型糖鎖が細胞内局在と輸送活性に及ぼす影響を検討した。これまでにヒトおよびマウスSLCO2A1に複合型糖鎖が結合していることを見出し、特にヒトSLCO2A1ではN134、N478、およびN491に糖鎖が結合していることを明らかにした。さらに、N134、N478、N491を全てグルタミンに変異させると、SLCO2A1の細胞膜画分/全膜画分の発現比が野生型よりも低下し、また基質である6-carboxyfluoresceinの取込み活性が顕著に低下することを見出した。以上より、N型糖鎖がSLCO2A1の細胞膜局在を制御する因子の一つであることが示唆された。現在、N型糖鎖変異によってSLCO2A1の細胞膜発現量が低下するメカニズムを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
N型糖鎖がSLCO2A1の細胞内局在と輸送活性を制御する因子の一つであることを見出すことに成功したためおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
N型糖鎖変異によってSLCO2A1の細胞内局在が変化するメカニズムを明らかにすると共に、SLCO2A1糖鎖修飾の生体内における病態生理学的意義についても検討する。また、リン酸化やユビキチン化などの糖鎖以外の翻訳後修飾がSLCO2A1の局在に与える影響についても検討を開始する。
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Causes of Carryover |
研究開始当初は局在制御因子がうまく見つからない場合にプロテオミクス等を用いてSLCO2A1の翻訳後修飾や足場タンパク質などを網羅的に解析する予定であったが、早い段階でN型糖鎖が細胞内局在制御因子になり得ることを見出せたため、プロテオミクスの実施には至らなかった。次年度はN型糖鎖の検討に必要な実験試薬や実験器具類の購入のための消耗品費として使用するだけでなく、当初予定していたプロテオミクスを実施するために使用する。また、研究成果発表のための旅費および英文校正費用も計上する。
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