2020 Fiscal Year Research-status Report
SBNO1による神経幹細胞の増殖・分化スイッチング制御機構の解明
Project/Area Number |
20K22735
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
井原 大 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40884367)
|
Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
Keywords | Sbno1 / ニューロン / 神経間細胞 / 分化 / ヘリカーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で我々は神経幹細胞におけるSBNO1のスイッチング機能に着目した。神経幹細胞でのp53欠損は大脳皮質の肥大を起こすことから、p53がニューロン数を制御することが示唆されている。所属研究室では、過去に行ったイーストツーハイブリッドの結果より、SBNO1のRNAヘリカーゼドメインとOTUB1がタンパク質―タンパク質間相互作用することを見出している。そこで、SBNO1がOTUB1を介してp53を制御する仕組みを明らかにする。現在までに、上記研究成果を報告した学会および論文発表はないが、本申請研究の遂行により、細胞レベルでの免疫沈降実験よりお互いのタンパク質間結合のみでなく、タンパク質発現の変化を誘導することが示されている。今後の取り組みとして、SBNO1の細胞内局在を神経幹細胞とニューロンの間で比較を行い、細胞内局在を変化させることでSBNO1の分子機能の変化を説明できるか検証していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2020年度において下記の研究計画に沿って実験計画を立てた。しかしながら、神経芽細胞を用いた解析結果から、Sbno1は核に局在しており、Otub1は細胞質に局在していることがわかった。そのため、申請研究計画1(レクトロポレーション法によって、マウス胚大脳皮質でOtub1の機能阻害を行い、神経幹細胞の増殖と分化への影響を組織学的解析によって評価する。)の遂行を見送り、Sbno1とOtub1の細胞内局在に注目して解析を進めた。本申請研究はイーストツーハイブリッドの結果よりSbno1のRNAヘリカーゼドメインとOtub1がタンパク質―タンパク質間相互作用することから発案されたものであるため、Sbno1のRNAヘリカーゼドメインとOtub1の免疫沈降実験を行った。この結果よりSbno1のRNAヘリカーゼドメインとOtub1は直接相互作用することが確認できた。我々は次にSbno1のRNAヘリカーゼドメインに着目し、細胞内局在を免疫染色により観察した。Sbno1のRNAヘリカーゼドメイン神経芽細胞で強制発現させたところ、細胞質に局在を示すことが明らかになった。この結果は、Sbno1は細胞質に局在することでOtub1とタンパク質―タンパク質間相互作用で結合できる可能性を示唆している。申請者は、Sbno1が細胞質に局在する理由に注目し、引き続き本申請研究を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本申請研究では、申請書に記載した下記のニューロンのSbno1機能の解析に加え、神経幹細胞の自己増殖におけるSbno1機能に関しても追加の解析を行う。 1.ニューロンでのSbno1機能 幹細胞から産生されたニューロンが脳室帯から軟膜側へ放射移動すると、Sbno1は核に凝集する。また、Sbno1が転写調節因子と結合すること (Takano et al., 2010; Watanabe et al., 2017)から、Sbno1は遺伝子発現制御に関わっていることが示唆される。皮質ニューロンのゲノムDNAと抗Sbno1抗体を用いてChIP-seqを行い、Sbno1が結合する領域を同定する。また、Sbno1 NSC cKOの大脳皮質とコントロールの大脳皮質での遺伝子発現の違いをRNA-seqによって網羅的に探索する。RNA-seqで発現変化があり、ChIP-seqでSbno1が結合することが示されたゲノム領域近傍の遺伝子について、ニューロン分化過程にそった経時的な発現変化をcKOとコントロールの大脳皮質で比較する。 2.神経幹細胞の自己増殖におけるSbno1機能 神経幹細胞でのSbno1およびOtub1は、細胞内のどこに局在しているのか解析を行う。これまでの研究結果から、これらの分子は細胞腫毎に異なる細胞内の局在パターンを有しており、その分子機能は、細胞内局在によって異なる可能性が高い。Sbno1およびOtub1の細胞内局在を細胞種毎(ニューロン、神経芽細胞、神経幹細胞)の免疫染色によって解析し、共局在を示す細胞株での分子間相互作用を調べていく。
|
Causes of Carryover |
当該年度の所要額に大きな差は生じなかったが、コロナウイルスの影響もあり学会発表に参加する機会がなかった。そのために旅費の支出額が想定を下回ったが、実験する期間が長くなったので物品費が多くなった。
|