2020 Fiscal Year Research-status Report
後天的因子が関与する左右非対称な視覚ネットワーク形成機構と生理的意義の解明
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20K22738
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鈴木 俊章 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 講師(研究機関研究員) (50877941)
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Project Period (FY) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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Keywords | 感覚器官 / 脳神経 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後の神経活動と対象としている遺伝子発現の関係を調べるため、開眼前の遺伝子発現レポーターマウスを用いて主に脳におけるレポーター発現細胞について観察した。 まず、開眼に伴う視覚系の神経活動と対象の遺伝子発現に関係性があると考え、開眼前に片目を縫い合わせ開眼を防ぐ、単眼遮蔽モデルを用い、開眼後の網膜や脳における遺伝子発現パターンについて調べた。しかしながら遮蔽の有無に関わらず、レポーター発現細胞が不規則的に認められ、開眼をモデルとした生後の神経活動との相関関係は見いだせなかった。 また、脳におけるレポーター発現細胞の規則性を調べるため、6ヶ月齢の遺伝子発現レポーターマウス脳を解析したところ、遺伝子を発現している細胞は神経細胞マーカーNeuN陽性の細胞であることがわかった。そこで、特定の神経伝達物質を担う神経細胞か否か免疫染色法で調べたが、特定の神経伝達物質マーカーで染色されるような規則性は見いだせていない。またレポーター発現細胞は特定の脳領域に集中している訳ではなく、左右非対称性に脳領域全般に、個体毎に大きくばらつきながら認められ、脳領域とレポーター発現細胞の関係性についても規則性を見出せてはいない。特定の脳領域のみに着目してみると、どの個体についてもレポーター発現細胞は存在し、個体によっては左右の脳それぞれで細胞数は異なっていた。しかし、領域内のレポーター発現細胞数の大小に関わらず、ある一定の小領域に偏在する傾向が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子を発現する細胞と、生後のイベントや細胞の局在パターンなどに一定の関連があると仮説を立てていたが、当初の仮説を支持する結果が得られていないため。 (1) 遺伝子発現細胞の規則性の解析:現在までに脳における遺伝子発現細胞は神経細胞マーカーNeuN陽性の細胞であることまでは特定されたが、神経伝達物質や脳領域との一定の規則性等はほとんど見出されていない。 (2) 遺伝子発現パターンと視覚情報入力の関連解析:単眼遮蔽モデルを解析したが、特定の関連性は見出されていない。 (3) 神経回路との関連解析:現在までにトレーサーやウイルスベクターを用いた検討までは至っていないが、既知の神経回路との関連性(例えば、外側膝状体と一次視覚野)とレポーター発現細胞のパターンを照らし合わせても、関連していることを示唆する傾向は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
偏在傾向が見出された領域等に着目し、マウスの月齢、雌雄、genotypeなどの因子とレポーター発現細胞数の関連を検討し、生後の遺伝子発現の規則性や左右非対称的な発現の出現機構に迫って行きたい。
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Causes of Carryover |
神経回路トレーサー等を購入する予定でいたが、実験結果からすぐに購入する必要が無くなり、計画を変更した為、未使用額が生じた。
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